蝉氷坊のブログ

 文殊会通信(読書、映画、美術、酒をめぐる片言隻句)ぶらぶらあるき(県内篇・県外篇)梵夫の時間(おりおりの日誌)

新・銀幕の浄土(気ままな映画評)その8

f:id:senhyo-bo:20161213200726j:plain

「風の中の牝𨿸」(小津安二郎/1948)

 

凄みのある女優

 妻が行ったという曖昧宿に出かけた夫は、相手に呼んだ娼婦に手も触れず就職口を世話してあげようとさえ言う。家にもどった夫が、自分もわだかまりを捨てるから二人で手をたずさえて生きていこう、と妻に言うセリフは紋切り型に過ぎる気がするが、敗戦3年後という時代にはそれがふさわしくもあり、実際に観客に訴える効果もあっただろう。

 和解した二人が抱擁するシーン、夫の背で動く妻の手の演技。「情動」ということばが思い浮かんだ。この手(指)は夫には当然見えないわけだが、もし見えたとしたら新たな疑念や嫉妬にかられるのではないか、などと変なことを心配した。

 短い時間ながら印象に残る場面である。ほかにも、階段から転げ落ちてやがて起き上がろうとするときの手足の細かい動きなど。演じる田中絹代に凄みを感じる。

 

広告を非表示にする
蝉氷坊通信メンバー  蝉氷坊 1954年生   海*堂 1954年生   高*庵 1958年生   法*斎