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蝉氷坊のブログ

 文殊会通信(読書、映画、美術、酒をめぐる片言隻句)ぶらぶらあるき(県内篇・県外篇)梵夫の時間(おりおりの日誌)

文殊会通信第41号 2016年4月1日号

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海*堂  消息

 

 しばらくお休みです。

 

蝉氷坊  消息

 

●最近読んだ本

1.『市川崑と『犬神家の一族』』/春日太一新潮新書/2015.11 ★★★

 

 「犬神家の一族」に始まる一連の角川映画はすべて封切時に劇場で観たが、市川崑の映画として意識的に観たことはなかった。多くの名作を生み出してきた巨匠の作品であることより、豪華なキャストや派手な宣伝に惹かれて観たのだったと思う。二作目「悪魔の手毬唄」の評価の高さは現在まで続いているが、私もこちらの方が自分の好みにも合っていた。

 その後横溝シリーズ以外の市川作品も何本か観ることになるのだが、この二作をピークに出来が下降していったことは素人目にもわかった。

 「犬神家の一族」という作品を通して市川崑監督と日本映画の最後の光芒を書いた本書だが、新書という制約からか量が少なくもの足りない。同じ著者による分厚い映画論を期待したい。

 

2.『評伝川島芳子 男装のエトランゼ』/寺尾紗穂/文春新書/2008.3 ★★★

 

 著者はテレビ番組で初めて知ったときから、満洲国や川島芳子にずっと「ひっかかり」を感じて、卒論と修士論文のテーマとし追い続けてきたのだという。

 上坂冬子の『男装の麗人・川島芳子伝』(文藝春秋、1984)など先行するいくつかの著作と、その後に出された裁判記録や歌集などをもとにしている。作歌からその心情を汲み取る部分は別にすれば、推測をできるだけ避け資料にもとづく事実のみを記述しており、修士論文らしくやや硬い文章がかえって分かりやすくてよい。

 川島芳子の、日本や日本人に対する愛憎なかばする感情は、戦争がもたらす被害者としての一面と、彼女自身のエキセントリックな性格が混然する中で生まれたと思われるが、心底敬愛に足る日本人に(そしておそらくは日本人以外にも)最後まで出会うことができなかったことが不運であった。結局それが新生中国による銃殺刑につながったといえるだろう。

 

3.『地を拓く』/月舘勝蔵/私家版/1986.11

 

 戦時中の1941(昭和16)年、青森県横浜町から満洲に開拓団として入植、敗戦とともに引き揚げた一農民の回顧録。恵贈本。

 

●今読みかけの本

『銀の森』/沢木耕太郎朝日新聞出版/2015.3

『数学する人生 岡潔』/森田真生編/新潮社/2016.2

 

▼アート全般

映画「秋刀魚の味」/小津安二郎/松竹/1962 ★★★

 

 小津は、ありふれた(都会の)家庭にある父娘というシチュエーションの中から日本人の特質をあぶり出そうとするのだろう。小津の映画とは要するに、よい面もあり悪い面もある、あるいはそれが混然となった私たち日本人のありよう(生態)を提示してみせたのではないだろうか、と思うのである。娘の結婚という小津映画の反復性は、昆虫の標本箱に並ぶ美しい近似種のごとくである。

 主人公笠智衆が自分の恩師父娘(東野英治郎杉村春子)が営む場末のラーメン屋を訪ねて行く場面で、トタン塀に映画のポスターが貼ってある。よく見るとこの「秋刀魚の味」と同じ1962年に公開された2本の映画、「切腹」(小林正樹監督、仲代達矢主演)と「かあさん長生きしてね」(川頭義郎監督、勝呂誉主演、こちらは未見)である。前者には岩下志麻が、後者には佐田啓二が出ていて、二人は「秋刀魚の味」で主人公の娘と息子の役。

 

【編集後記】

 3ヶ月ぶりの更新です。通算41号です。

 還暦を過ぎて早1年半。新たな事業が加わり忙しさが倍加しましたが、やらねばという意欲もやれるという自負もまだ残っています。

 法*斎さんからひさびさに記事が届きました。話題は「レイダース/失われたアーク(聖櫃)」と「燃えよドラゴン」という二本立て。嗚呼、懐かしい往年の傑作!

 海*堂さんはしばらくお休みします。

 

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蝉氷坊通信メンバー  蝉氷坊 1954年生   海*堂 1954年生   高*庵 1958年生   法*斎