読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

蝉氷坊のブログ

 文殊会通信(読書、映画、美術、酒をめぐる片言隻句)ぶらぶらあるき(県内篇・県外篇)梵夫の時間(おりおりの日誌)

文殊会通信第36号 2015年9月1日

f:id:senhyo-bo:20150901151638j:plain

 

海*堂  消息

 

●最近読んだ本

 今月読了本はなし。

 

▼今読みかけの本

『青空としてのわたし』/山下良道/幻冬舎/2014.5

 

■アート全般

「ヘレン・シャルフベック 魂のまなざし」展/宮城県美術館/2015.8.6~10.12

 

 全く聞いたこともなかった画家だったが行ってみた。ヘレン・シャルフベック(1862-1946)はフィンランドを代表する女性画家。日本では初の回顧展とのこと。

 初期は写実的な作品で、後にはパリ留学の経験が影響を与えた作品を描くようになるが、その過渡期と思われる時期に制作された古典絵画の模写が4点あった。ホルバインによる男の肖像や、有名なベラスケスによる王女マルガリータの肖像などだったが、その緻密な写実的描写力は凄いものだった。

 その後写実から離れ、陰影を弱め立体感を乏しくして淡い色使いを多用し、マリー・ローランサンを思わせる画風に移る。印象派風の描写も見られる。自画像を多く描いているのが特徴。しかし、その世界は暗鬱で物悲しいものとなっていく。会場の年表を見ると、作者個人の恋愛の懊悩が背景にあるようだった。それでもその世界から抜け出すように、自作の再解釈というテーマの発見によって独自の新しい新しい世界に向かっていく。深く沈潜する思いを秘めた作品となった。

 

●酒肴全般

1.純米酒/発泡にごり酒 八海山/八海醸造株式会社/新潟県南魚沼市 ★★★☆

 

 先月の獺祭発泡にごり酒が★★★、月の桂が★★★★なので、勝手に星三つ半とした。スーパーの酒コーナーで見つけて購入。八海山の新製品のようだ。発泡は炭酸ガス添加によるものと思われ、月の桂のような酵母による発酵の炭酸ガスとは異なる。獺祭より味が強いが、月の桂よりは穏やかで甘口だがさらさらと飲みやすい。

 

2.純米吟醸/仙台驛政宗 愛姫(めごひめ)/勝山酒造株式会社/仙台市 ★★★★

 

 仙台駅限定販売。勝山の吟醸酒に共通する味。吟醸香の中に酸味があり、口に含むと奥深い味わいがある。

 

 

高*庵  消息

 

 しばらくお休みです。

 

 

蝉氷坊  消息

 

▼最近読んだ本

過去帳ー永遠に生きている名の発見ー』/切田未良/丸善/2003.4 ★

 

 県立図書館で本を検索していて見つけた一冊。著者は地方史家で、かつて医療関係の仕事をされていたようである。東北の医療史研究の資料として長年過去帳を調査する中で得た戒名に関するトリビアというべき本で、内容的に得るものはなかった。

 

■今読みかけの本

夏目漱石の美術世界』(展覧会図録)/東京藝術大学美術館・東京新聞編/2013

 

●アート全般

1.映画『アリスのままで』/R.グラツァー、W.ウエストモアランド監督/2014/フォーラム八戸 ★★★

 

 若年性アルツハイマーに突如襲われる大学教授が主人公。大いに期待して観たのだが、ややはずれ。

 進行する病気の中で病院関係者を前にスピーチするところなど、いいシーンもある。アメリカ映画らしく、自分や家族、仕事や家庭との葛藤のシーンが情緒に流されることなくどんどん展開していくのもよい。

 しかし、時間の経過と病気の進行の度合い(深刻さ加減)が分かりづらい。いや、長女の妊娠が分かってから出産する前後の期間だからはっきりしている(ほかにもヒントはある)のだが、本人の思いと家族の受け止め方の展開がかみ合わない。最近の映画にしては短い(101分)せいなのかどうか。家族一人ひとりの描き方が足りないせいで、主人公や病気に対してどう考えているのかがよく分からないまま映画は終わる。

 主人公ジュリアン・ムーアの二女を演じたクリステン・スチュワートの細やかな表情がなかなかよい。

 

2.『エイジアン・ブルー 浮島丸サコン』/堀川弘通監督/1995/DVD ★★

 

 「浮島丸下北の会」主催の浮島丸出港追悼集会で鑑賞。

 浮島丸事件は、1945(昭和20)年8月22日朝鮮半島釜山に向かって青森県大湊港を出港した海軍特設運送船「浮島丸」が2日後の24日夕刻、京都府舞鶴湾でアメリカ軍が敷設した機雷に触れて爆発沈没、日本人乗員25名、朝鮮人労働者とその家族524名(公式発表)が犠牲となった海難事件。

 映画はこの事件を背景に、下北半島での強制労働の実態や、日本で戦後を生きた朝鮮の人たちや在日二世たちの事件や日本に対する複雑な思いを描く。一般公開を前提に作られているためか、ラブストーリーの要素が色濃い。一緒に観た人の中には内容がよく分からない、という人もいたようだ。

 山辺友紀が好演、偶然だがこちらも主人公の二女役。

 

▼酒肴全般

特別純米極上 吉乃川/吉乃川(株)/新潟県 ★★★

 

 この酒のことはこの通信第10号にも感想を書いた。おそらく同じものだと思うのに、前回淡麗と感じた酒が今回は甘く感じたのはどうしてだろう。舌に感じるかすかな刺激は変わらないが、そのよさよりも甘さによって★ひとつ減点。

 余談ながら喜多方市に吉の川酒造があり、「吉の川」という銘柄もあってなかなかおいしい。また、長野県小布施町にも「本 吉乃川」という酒があるとのこと(実物は未見)。

 

【編集後記】

 通算36号です。

 「夏目漱石の美術世界」という展覧会があった(2013年)ことを最近知り、見逃したことを後悔し、図録を見てさらにその思いを深くしました。

 漱石文学に登場する美術作品(おもに絵画)の実在するものは実物を、実在しないものは専門家に描いてもらって展示するという企画展です。例えば『三四郎』に出てくる《森の女》と題する絵は、原口という画家が美彌子を描いた絵として登場します。これまでの漱石研究を踏まえ、原口のモデルは黒田清輝で《森の女》は黒田の代表作のひとつ《湖畔》を彷彿させるものであろうと推定し、当時の油彩技法や画壇の傾向なども考慮しながら一流画家が「再現」する、という具合です。普通の美術展とはひと味もふた味も違う展覧会だったことは図録からも十分に伝わります。残念でした。

 写真は山形県鶴岡市の善宝寺、山門のみごとな欄間彫刻から(左右の彫刻を横長に合成)。上の写真では分かりにくいのですが、右側の獅子と向きあう小さな生き物(傘の骨のように流れた水の上あたり)は亀? まさか蛸では?…。

広告を非表示にする
蝉氷坊通信メンバー  蝉氷坊 1954年生   海*堂 1954年生   高*庵 1958年生   法*斎