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蝉氷坊のブログ

 文殊会通信(読書、映画、美術、酒をめぐる片言隻句)ぶらぶらあるき(県内篇・県外篇)梵夫の時間(おりおりの日誌)

文殊会通信第34号 2015年7月1日

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海*堂  消息

 

 今月はお休みです。

 

 

高*庵  消息

 

 しばらくお休みです。

 

 

蝉氷坊  消息

 

●最近読んだ本

1.『江藤淳大江健三郎』/小谷野敦/筑摩書房/2015.2 ★★★

 

 おおざっぱな言い方をすれば本書において、江藤淳は作品、私生活ともにシニカルに、大江健三郎は作品は好意的に、私生活は批判的に描かれている。

 読者ではなかったが、江藤淳の死には衝撃を受けた。それは高名な文学者の自殺に対してというより、成熟した精神の持ち主にして愛妻への追慕と老醜への恐怖を克服できないという「弱さ」に対してである。

 

2.『映画女優若尾文子』/四方田犬彦斉藤綾子編著/みすず書房/2003.6 ★★★★

 

 若尾文子の昔の出演作を観ようと思ったのは、数年前のNHK朝ドラ『おひさま』を観たのがきっかけである。

 学生のころ『雁の寺』(1962年)と『越前竹人形』(1963年)をテレビの深夜劇場か何かで観た記憶があるが、どちらも強く印象に残った。が、1970年以降の出演は映画ではなくほとんどテレビドラマであり、同時代に観た女優ではない。 

 

▼今読みかけの本

1.『背教者の系譜ー日本人とキリスト教ー』/武田清子/岩波新書/1973.6

2.『証言・花岡事件』/野添憲治/無明舎出版/1986.7

 

■アート全般

1.映画『炎上』/市川崑監督/1958/DVD ★★★★

 

 三島由紀夫の『金閣寺』の映画化だが、脚本は和田夏十が小説ではなく、三島から借りた創作ノートをもとに書いたオリジナルという。金閣寺(映画では驟閣寺)で修行する貧しい寺の息子がさまざまな葛藤の末に寺を焼いてしまう、という事件(1950年)がモデル。

 この映画で市川崑は、観る者に感情移入する時間を与えないような作り方をしている。主人公は自分を束縛する者(住職、母親、友人・戸苅)との関係が複雑になる一方、自分を理解する者(友人・鶴川、遊郭の女)との関係は淡い。鶴川は死に、遊郭の女とは一度きりでしかも話をしただけで別れる。主人公の顔はときどきアップになるのだが、観る者が懊悩の中身を伺うだけの時間はない。

 原作者の三島はこの映画の「センチメンタリズムのなさ」を絶賛したという。しかし私は、画面の美しさとは裏腹に、このストーリーから主人公の美への執着(さらにその象徴たる金閣寺を消滅させるという心情)を読み取るのは難しいと思える。それにしても、市川雷蔵の美しさ(かっこよさ)は比類がない。

 

2.映画『おとうと』/市川崑監督/1960/WOWOW ★★★

 

 録画していても機会がなく、そのまま消してしまう映画もたまにある。消そうかどうか迷っているうちに、『炎上』を観たあとで急に観る気になった。数々の映画賞を受けており、名作の誉れ高い作品。原作は幸田文の同名の小説。脚本は水木洋子

 映画史上有名な「銀残し」という手法で作られた画面の美しさが感じられないのはテレビのせいか、原版のせいか(オリジナルのフィルムは失われていて、復元されたものだという)。

 姉(岸惠子)と弟(川口浩)の愛情の強さには一種セクシャルな危うさがあり、ありふれた家族物語にならない適度な緊張感をもたらしているのだろう。姉弟の義理の母親(田中絹代)がつぶやくキリスト教のことばもこの緊張感に与している。だが、全体としてみれば世評ほどの作品とは思われない。

 

【編集後記】

 通算34号です。

 海*堂さんはパソコンの調子が悪くてお休みです。

 『江藤淳大江健三郎』。ある書評で、読み始めたら止められない、とあったのですがその通りでした。二人がもっとも活躍した1970~80年代は、自分にとって10代後半から30代前半の乱読の時期と重なります。大江は愛読した作家の一人であり、江藤の方は私は読者ではないが当時すでに大家であり読書好きで名を知らぬ者はなかったでしょう。同書に登場する二人をめぐる人物は多士済々で、巻末の人名索引は壮観です。最近読んだ本に関わる名が多いのは、ある意味自分が年取ったとも、読む本が偏ってきたともいえます。

 さて、若尾文子大江健三郎原作の映画に出ています(増村保造監督の『偽大学生』/大映/1960、原作は「偽証の時」/1957)。これは意外でもあり、一面当然ともいえます。

 1950年代は年間の製作本数が500本を超える邦画の黄金期でした。松竹、東宝大映東宝、日活の5社が毎週2作品を年間を通じて作ったといいます。52年デビューの若尾は、60年までの9年間で92本(!)の映画に出ています。当時話題の小説の映画化も多く、新人の作品では「仮面の告白」で世に出た三島由紀夫の「永すぎた春」(57年、田中重雄監督)、「太陽の季節」で芥川賞を受けた石原慎太郎の「処刑の部屋」(56年、市川崑監督)などがあります。58年に『芽むしり仔撃ち』で芥川賞を取った大江の作品もこの流れの中にありました。今なら人気コミックの映画化といったところでしょうか。

 一方の若尾は、溝口健二川島雄三にその演技力を認められて以降スター街道を駆け上った時期でした。ちなみに50年代の出演作92本は、生涯通算159本の約6割に当たります。

 写真は喜多院川越市)の羅漢像群。大本山總持寺参拝の帰途に寄りました。

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蝉氷坊通信メンバー  蝉氷坊 1954年生   海*堂 1954年生   高*庵 1958年生   法*斎