蝉氷坊のブログ

 文殊会通信(読書、映画、美術、酒をめぐる片言隻句)ぶらぶらあるき(県内篇・県外篇)梵夫の時間(おりおりの日誌)

文殊会通信第32号 2015年5月1日

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海*堂  消息

 

●最近読んだ本

『楽園のカンヴァス』/原田マハ新潮文庫/2014.7 ★★★☆

 

 毎朝読む新聞小説以外では、単行本として久しぶりに読んだ小説。以前新聞の書評を見て気になっていて、偶然文庫本になっているのを見つけて購入。

 4月6,7日と長野松代の本師の墓参に出かけたときに持参。はやぶさ、かがやきと乗り継いで春曇りの空のもと、梅、桜、杏の花を窓外に一瞥しつつ読み続けた。

 内容はルソーの有名な絵画「夢」の謎を巡る、人が殺される事件のないサスペンス・ミステリー小説。当時のルソーの生活を描きながら、ルソーとピカソとの交友にまつわる秘密が明かされようとする。

 美術館の裏側や、美術展開催にまつわる知られざる駆け引きなど、著者の経歴ならではの話も興味深い。 

 帰り旅では東京に寄ることにした。六本木の国立新美術館マグリット展かルーブル美術館展を観ようという魂胆だった。上野ではくたかを下車した後、メトロ日比谷線で六本木駅まで行って美術館まで歩こうかと思ったが、雨模様だったので、上野から西日暮里まで行ってメトロ千代田線に乗り換え、美術館に直結する乃木坂駅で降り、改札を出てから右に曲がって美術館の入り口についたらシャッターが下りていた。立て看板には定休日の文字。今日は火曜日。月曜定休とばかり思っていた。そうとわかっていれば上野の国立博物館の「コルカタ・インド博物館所蔵 インドの仏 仏教美術の源流」を観ることができたのに。上野に戻ってきたらはやぶさの発車まで1時間しかなかった。いったい何のために金と時間を費やして東京まで来たのやら。 

 八戸駅に到着し、八戸線に乗り換え車中で読了。サスペンスのストーリーとしては、いくつか疑問に思う(単に理解が届かない?)ところもあるので星3つ半としたが、長い車中楽しむことができた。

 

▼今読みかけの本

『あなたの知らない「仏教」入門』/正木晃/春秋社/2014.7 ★★★★

 

 寝ながら本で再読中。

 

■酒肴全般

純米吟醸(たぶん)/〆張鶴/宮尾酒造/新潟県村上市 ★★★★

 

 四月末、教区会があり添菜された酒。宴会で飲んでいるときは特に印象に残らなかった。。当番の役得で、一升瓶に二合程度残った酒がもったいないので四合瓶に詰め替えて持ち帰った。数日後、冷蔵庫から出して一人静かに飲んだらその芳醇なこと、喉に引っかかることなく奥に落ちてゆくその残り香の花のような味わいを楽しめた。この残り香はだいぶ前に飲んだ「勝山」の「献」に似ている。

 

 

高*庵  消息

 

 しばらくお休みです。

 

 

蝉氷坊  消息

 

●最近読んだ本

1.『映画で学ぶ現代宗教』/井上順孝編/弘文堂/2009.5 ★★

 

 タイトル通り、宗教をテーマにした映画や映画の中で描かれた宗教について解説している。一つの映画が見開き1ページ半の約2000字(残りの半分はあらすじ)で、これだけあればかなり書き込めると思うのだが、内容的には映画に描かれた宗教をめぐる環境や状況をデータとして伝える、といった感じのものが多く期待した教義の解説や映画的文脈での分析などはあまりない。やや期待はずれ。

 

2.『徳一と最澄 もう一つの正統仏教』/高橋富雄/中公新書/1990.6 ★★★

 

 25年前に必要があって読んだことがあり、再読。

 法相宗の徳一と天台宗最澄の宗論。私のような宗派を異にする凡僧が、本書を読む意味は何だろうかと考えてみる。

 徳一について、名前しか知らない。徳一と最澄の宗教論争について、論争の事実のみで詳細は知らない。徳一の主張する「一乗批判」「法華経批判」ないし「天台宗批判」について、(本書により)理屈として理解できるが天台宗法相宗ともに教義・経典の知識がまったくない。第一、本書に出てくる両者の著作のどれ一つ読んだことがない。

 ないないづくしなのであるが、法相宗天台宗の正統争い、それも(本書ではあまり触れていないが)教線拡大をめぐる教団の勢力争いとみれば、日本宗教史上に繰り返しあらわれるできごとである。複数の宗派の場合もあり、同一宗派のセクト間の場合もある。異教間のこともある(落語にも「宗論」がある)。宗派間(ないし教団内)における政治力学的な読み替えが可能ではある。

 

▼今読みかけの本

1.『紀州 木の国・根の国物語』中上健次選集(3)/小学館文庫/1999.1 

2.『映画女優若尾文子』/四方田犬彦斉藤綾子編著/みすず書房/2003.6

 

■アート全般

1.映画『悼む人』/堤幸彦監督/2015/フォーラム八戸 ★

 

 原作は天童荒太直木賞受賞作(未読)。

 見どころのない凡作であった。最近は観る本数自体が少ないので、なけなしの時間をこういう映画に費やすと悲しくなる。選ぶ自分も情けない。

 よかったのは大竹しのぶぐらい。この人は本当にうまいなあと思う。セリフを言わない場面でもスクリーンの中で存在感が際立っている。現代の俳優ではたぶんあまりいないだろう。

 閑話休題

 恋愛や家族愛をテーマに死や死者、死後の世界を扱った映画は、1985年前後から目立つようになったのではないか。邦画では『異人たちとの夏』(1987年/大林宣彦監督)、洋画なら『ゴースト/ニューヨークの幻』(1990年/ジェリー・ザッカー監督)がその代表的なものだろう。今日でもこうした映画は作り続けられている。

 このジャンルの映画の、邦画と洋画の大きな違いは、宗教性や宗教者の有無であろう。アメリカの一見気楽な娯楽大作も、気をつけてみれば聖書やキリスト教をベースにしたセリフやシチュエーションが埋め込まれ、キリスト教の中でもカトリックプロテスタントの違い(単純なものではないだろうが)、キリスト教圏と他宗教(とくにイスラム教圏)との対比ないし対立がストーリーの背景にあったり、また教義的な観点から作品が評価されたりする。一方の邦画では、宗教である以前に民間信仰や都市伝説、日本独自の習慣がそのまま宗教的な雰囲気や状況を醸す「装置」として「使われて」いる場合が多いのではないか、という気がする。

 『ダヴィンチ・コード』(2006年、ロン・ハワード監督)はその内容をめぐりローマ・カトリック教会から厳しく糾弾され、『アナと雪の女王』(2013年、ディズニー・スタジオズ)は主人公のキャラクターが同性愛を肯定するものだとしてキリスト教団体から批判された。フィクションでも娯楽作でも、宗教的な観点からの批評・批判は常についてまわる。

 『おくりびと』(2008年、滝田洋二郎監督)が海外で評価されたのは、納棺師という職業とそれにまつわるエピソード(作法の折り目正しさとか、納棺師を見守る遺族の遺体への意識の変化など)が現代のオリエンタリズムとみなされたからだろう。この映画から宗教性を見出すのはむずかしい(擬似的な雰囲気だけがある)。

 

2.ワシントン・ナショナル・ギャラリー展/三菱一号館美術館 ★★★★

  ピカソと20世紀美術/東京ステーションギャラリー ★★

 

 実はブリジストン美術館の「ベスト・オブ・ベスト展」を観たかったのだが、行列のあまりの長さに驚きくじけた。

 「ワシントン…」はいい展覧会だった。実物を観たことのない絵や名前しか知らない画家たちの絵を間近でゆっくり鑑賞する機会は貴重である。とりわけ感嘆したのはブーダンの絵の空と雲の光の美しさ(「空の巨匠」という賛辞もむべなるかな)。ボナールやコロー、ヴュイヤールといった名前のみ知る画家の絵も手の届く距離で鑑賞できた。ビルに取り囲まれた美術館の前庭のくつろいだ雰囲気もなかなかよかった。

 一方の「ピカソ…」は展示上の分類がやや雑然としていて、散漫な印象を受けた。館内の順路も分かりにくい。

 

【編集後記】

 通算32号です。

 今回はゴールデンウィークのため、更新がずれ込みました。

 ヘッダの写真は、皆既月食の終わり頃。4月4日午後10時32分撮影。今回は月面が肉眼でもきれいに見えましたね。

 

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