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蝉氷坊のブログ

 文殊会通信(読書、映画、美術、酒をめぐる片言隻句)ぶらぶらあるき(県内篇・県外篇)梵夫の時間(おりおりの日誌)

文殊会通信第31号 2015年4月1日号

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海*堂  消息

 

●最近読んだ本

『アップデートする仏教』/藤田一照・山下良道/幻冬舎新書/2013.9 ★★★

 

 僧堂での坐禅では、指導役の僧から足の組み方や手の組み方、姿勢の保ち方、視線の方向など身体的なことが主に教えられた。しかし坐中の意識については教えられた記憶はない。一般に、坐中の頭の中については、一個の小石が静かな水面に落ちたときに広がった同心円状の波紋が静まるように心を落ち着けるとか、数字を数えるとか、呼吸を意識するように等と言われることがある。ところが道元禅師の只管打坐は、このような数息観や随息観を用いないことを特徴とする。では、どのように心をもっていけば良いのか。これがなかなかわからない。

 この本は、二人の対談からできている。二人の始まりは同じ安泰寺ながら、異なる道を通って来ても目指す方向は近いのだろう。これまで、テーラヴァーダ仏教の瞑想の本は次々出版されてきたが、坐禅についての本の中でも坐中の精神状態について言及した本は、著者の一人、藤田師の『現代坐禅講義』以外あまりなかったようだ。ここでは二人が縦横無尽に坐禅を論じていて興味深い。

 坐禅を中心に据え、宗派仏教を超えようとする問題提起の書。

 

▼今読みかけの本

『あなたの知らない「仏教」入門』/正木 晃/春秋社/2014.7

 

■これから読む予定で購入した本

1.『楽園のカンヴァス』/原田マハ新潮文庫/2014.7(2012.1)

2.『千年の翼 百年の夢』/谷口ジロー小学館/2015.2

3.『お寺の収支報告書』/橋本英樹/祥伝社新書/2014.8 

4.『般若経大全』/小峰彌彦 他/春秋社/2015.1

5.『史実 中世仏教』第1,2巻/井原今朝男/興山舎/2011.3、2013.6

 

 

高*庵  消息

 

 しばらくお休みです。

 

 

蝉氷坊  消息

 

●最近読んだ本

『十九歳の地図/蛇淫 他』中上健次選集(11)/小学館文庫/2000.5 ★★★★

 

 初期の短編集。「一番はじめの出来事」「十九歳の地図」「鳩どもの家」「豪徳寺ツアー」「蛇淫」「水の女」の6篇。

 初めて買った中上健次の本は短編集の『水の女』(作品社、1979年)だった。次に買ったのが『讃歌』(文藝春秋、1990年)。中上健次は1992年に他界しているから生前に読んでいるのはこの2冊だけ、私は中上の熱心な読者ではなかった。当時この二冊を読んだ印象は幻想文学に近いものだった。

 久々に「水の女」を読み、改めてその感を深くした。一種のユートピア小説であろう。

 「蛇淫」は映画『青春の殺人者』(長谷川和彦監督、1976年)の原作となった作品。実際に起きた殺人事件に材をとっているというが、中上の作品は短すぎて、両親を殺す若者の心理や状況がよく分からないうちにページが尽きる。これは映画の方がよい。

 ツアー・コンダクターの若者の宗教への無関心をシニカルに描いた「豪徳寺ツアー」は、いかにも1970年代の文学の匂いがする。読みながら、こんな小説を好んで読んでいた当時の身をよじるような恥ずかしさがよみがえる。解説によれば、豪徳寺善光寺がモデルらしい。

 

▼今読みかけの本

1.『検閲された手紙が語る満洲国の実態』/小林英夫・張志強編/小学館/2006.6

2.『映画で学ぶ現代宗教』/井上順孝編/弘文堂/2009.5

 

■アート全般

 舟越保武彫刻展/2015.1.24~3.22/郡山市美術館 ★★★★

 

 「長崎二十六聖人殉教者記念像」の作者として高名な舟越保武。その展覧会がたまたま出かけた先の福島県で開催されていたので、郡山市まで足を伸ばして観てきた。

 「ダミアン神父」像や「聖マリア・マグダレナ」像などは、穏やかな表情にこそかえって内に秘めた強い情感がうかがわれる。そう思ってみると、会場の胸像(主に女性)はどれもが穏やかだが、しかし切実な想いを語る直前の表情にみえてくる。また、上記の「記念像」や「原の城」などのキリスト教迫害に材をとった人物の、法悦とも見える表情に胸を打たれる。受難の悲嘆や苦痛よりも諦念や福楽といった仏教のことばが思い浮かぶ。彫刻家自身のキリスト教への深い信仰が、その作品に反映したものであろう。

 舟越保武岩手県一戸町の出身で、作品の多くは岩手県立美術館の収蔵品である。折をみて常設展示でゆっくり鑑賞したい。

 

【編集後記】

 通算31号です。

♧予定よりも早めに用事が済み、県立図書館に行ったときのこと。映画関係の棚に高名な政治学者の本を見つけ、拾い読みのつもりがつい読みふけってしまい、目的の本を借りずに帰るはめに。ただしこの本、同氏の映画に関するほかの著作と違いなぜかおもしろくない。それなら途中でよせばいいのに、ついつい時間を忘れて読んでしまったのでした。

♦最近よく聴いているのはケリー・クラークソンのCD。アメリカの人気オーディション番組「アメリカン・アイドル」で優勝し、プロになった女性です(デビューは2003年)。この番組の詳しいことは知りませんが、過去の審査員にはジェニファー・ロペスポーラ・アブドゥル、マライヤ・キャリーなどのビッグネームがあります。少し暗めののびのある声が耳に心地よく、憶えやすくシンプルな曲が多く何度聴いても飽きないのです。

♡先日NHKの「BS世界のドキュメンタリー」で、「シリーズ アウシュビッツ解放から70年」と題して再放送された4本の番組の1本「実録 アイヒマン裁判」を観ました。番組の冒頭で、ナチス党員としてアイヒマンの戦争犯罪は自明のことながら、逮捕から裁判にいたるまでの手続きが合法的なものであるかどうかは疑問が残る、という意味のコメントがありました。へぇ、そうなんだ…。

♠法律というのは時にやっかいなものです。推定無罪の原則からいえば、告訴した側が有罪であることを証明すべきですが、往々にして被告側が無罪を証明することが強いられるというジレンマが生じます。冤罪を疑われる事件ではとくにそれが顕著で、被告の負担は計り知れません。

 ヘッダの写真は、会津若松市の御薬園(松平氏庭園)。3月撮影。

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蝉氷坊通信メンバー  蝉氷坊 1954年生   海*堂 1954年生   高*庵 1958年生   法*斎