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蝉氷坊のブログ

 文殊会通信(読書、映画、美術、酒をめぐる片言隻句)ぶらぶらあるき(県内篇・県外篇)梵夫の時間(おりおりの日誌)

文殊会通信第29号 2015年2月1日号

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海*堂  消息

 

●最近読んだ本

『がんと闘った科学者の記録』/戸塚洋二著・立花隆編/文春文庫/2011.6 ★★★

 

 1年半前に買った本。文殊会通信第9号に購入したことが書いてあった。2002年、ノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊氏の弟子であった著者は、小柴氏が構想したカミオカンデスーパーカミオカンデを作り上げ、ニュートリノに質量があることを発見し、最もノーベル賞に近いと言われながら癌のために2008年7月逝去。余命わずかと宣告されてから死の直前までのほぼ1年間の闘病の記録。この記録は元々WEB上のブログにあったもので、それを立花隆が編集して長い序文を付した。

 自分の病を科学者の視点で見つめ、その緻密な病状観察と冷静な治療記録とともに、カミオカンデで仕事をしていたときの奥飛騨の山歩きで見かけた樹木や葉の観察記録、自宅の庭の花々の観察記録、教育やその他人生一般についてのエッセイが独自の視点で綴られている。

 その中には仏教に関することもたびたび登場する。2007年11月15日のブログにあるように、仏教学者佐々木閑氏が新聞に連載した「日々是修行」というエッセイ(同名で新書化されている)によって仏教に興味をひかれていった。科学者という立場から、普通の宗教のエッセイと違うその理屈っぽさを評価している。さらに教えを請いたいと願っていたら、二人の対談が実現することにまでなって『犀の角たち』(文殊会通信第9号に掲載)を贈呈されたという。仏教(ここでは初期仏教)と科学とが矛盾せずに理解可能ということに惹かれていると思われる。その後たびたびこの二書籍が取り上げられることになる。

 最後のブログの日付は7月2日、入院することになったと報告。そして7月10日に逝去された。

 

▼今読みかけの本

『戸塚教授の「科学入門」』/戸塚洋二/講談社/2008.10

 この本は上記のブログの中で、科学に関するエッセイをまとめたもの。

 

■酒肴全般

 ①純米 ②吟醸 ③純米大吟醸/七賢/山梨銘醸株式会社/山梨県北杜市/①②③ともに★★★★

 

 山梨の人と縁ができて年末に3本セットで頂戴したもの。同じ銘柄で製法違いの酒を同時に飲み比べてみたのは初めて。①は麹のほのかな香りを持ち濃醇、②は吟醸香があって淡麗辛口、③は吟醸香が薫る淡麗ですっきりした味わい。共通するのは後味がすっきりしていて清冽で雑味が残らないこと。どれもうまいので、ぐい飲みに一杯ずつ注いでは飲み比べていたら飽きることなくつい飲み過ぎてしまった。

 

 

高*庵  消息

 

 しばらくお休みです。

 

 

蝉氷坊  消息

 

●最近読んだ本

 『〈満洲〉の歴史』/小林英夫/講談社現代新書/2008.1 ★★★★

 

 20世紀初頭の中国東北部は、中国・ロシア・日本の三国にとって軍事的にも経済的にもきわめて重要な地域であった。

 ロシアと中国は清朝以来国境問題が常に紛争の火種であり、日本の急速な大陸進出はさまざまな分野で現地でのトラブルを頻発させた。とくに商権や地権などをめぐる経済摩擦は、抗日の気運を次第に醸成していく。清朝後の中華民国政府は内部抗争と北部軍閥との駆け引きに明け暮れ、中国統一の速度を鈍らせていた。軍閥同士もたえず集合離散を繰り返し、三国は彼ら軍閥に対して右手で懐柔しながら、左手で潰滅のチャンスを狙うというように多重的で錯綜したパワーゲームが展開されていたのである。

 『検閲された手紙が語る満洲国の実態』(張志強との共編/小学館/2006)の著者が、検閲で押収された(したがって届けられることがなかった)手紙を随処に引用しながら、日本人の視点から見た満洲を綴る。その手紙から、庶民が不穏な状況を敏感に察知していたこと、情報もかなり正確だったことがうかがわれる。小冊ながら満洲通史として読み応え十分な内容と思う。

 

▼今読みかけの本

 『背教者の系譜ー日本人とキリスト教ー』/武田清子/岩波新書/1973.6

 

■アート全般

映画『蜩ノ記』/小泉堯史監督/2014/八戸フォーラムにて ★★★

 

 原作は葉室麟直木賞受賞作だが未読。

 藩主側室との不義密通の罪で10年の謹慎ののち切腹という処分が確定している戸田秋谷(役所広司)と、刃傷事件での切腹免罪と引き替えに秋谷の監視とその報告を家老中根兵右衛門(串田和美)から命じられた檀野庄三郎(岡田准一)。秋谷は藩主三浦家の家譜を切腹までの10年で書き上げる役目を負い、「蜩ノ記」と題した日記をつけている。庄三郎は秋谷の高潔な人格に触れるうちに彼の無実を確信し、やがて家老一派と反目するようになる。

 映画ではこの二人を軸に、秋谷と村人、庄三郎と秋谷の妻(原田美枝子)・娘(堀北真希)・息子(吉田晴登)との交流、家系をめぐる藩主と家老や御用商人との秘密などが描かれる。

 藤沢周平原作の一連の海坂藩ものにもつながる、時代劇の王道をゆく人情ドラマである。確かに丁寧に作られた作品なのだが、何か満たされない思いが残る。

 原田美枝子堀北真希の立ち振る舞いが美しい。寺島しのぶは好きな女優ではないが、尼僧を好演している。井川比佐志が演じる慶仙和尚は重要な役だがミスキャストであろう。臨済宗の名僧には見えない。

 以下はこの映画ではなく、時代劇に対する一般的な感想。

 いわゆる往年の時代劇映画をときどき観ている。以前は紋切り型の言葉遣いや演出をつまらなく感じたが、最近はむしろそれが事実に近いのではないかと思える。現代的な言葉遣い(武家の娘が父親をお父様と呼ぶたぐい)はがまんするとして、役職や階層の上下、社会的な立ち位置を無視したようなシチュエーション(城主の妻が夫や側近の面前で政治を批判するたぐい)はほとんどあり得ないだろう。だからNHK大河ドラマは最近観ない。

 

■酒肴全般

 有機米仕込 特別純米酒 一ノ蔵/(株)一ノ蔵宮城県大崎市 ★★★

 

 度数は14度と少し低め、さらりとした口あたり。普段あまり日本酒をたしなまない人向けの飲みやすさにこだわった作りとみたい。雑味の少なさ(広告の宣伝句)も飲みやすさにつながると思うが、その分もの足りなくもある。

 試しにぬる燗にしてみたら、味と香りとも常温よりも際立ち旨い。煮込み料理などに合いそうである。

 

【編集後記】

 通算29号です。

 映画監督のマーティン・スコセッシ遠藤周作の『沈黙』を映画化するというニュースは古い話です。スコセッシは原作を25年前に読み、シナリオは20年前に書きあげていたといいます。そして『ディパーテッド』(2006年)の次回作に予定していましたが、資金難(出資者がないということらしい、ホントか?)によりこれまで実現していません。「Variety」誌2014年7月号に、主演にアンドリュー・ガーフィールドが、撮影が2014年6月台湾で行われることなどが発表されました。ガセネタも多い映画界ですが(このニュースもこれまで何度か報道されています)、今度は大丈夫らしい。同誌2015年1月号には、日本語通訳の役が当初予定されていた渡辺謙から浅野忠信に交替したとのニュースが載りました。今年11月の公開はアカデミー賞を睨んでのこと、という記事を見てはいよいよ期待がふくらみます。

 篠田正浩版(1971年)は未見です。これも見たい。

 ヘッダの写真は、南三陸鉄道久慈駅前。去年の10月30日撮影。

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