蝉氷坊のブログ

 文殊会通信(読書、映画、美術、酒をめぐる片言隻句)ぶらぶらあるき(県内篇・県外篇)梵夫の時間(おりおりの日誌)

文殊会通信第27号 2014年12月1日

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海*堂  消息

 

●最近読んだ本

『ブッダをたずねて 仏教二五〇〇年の歴史』/立川武蔵集英社新書/2014.9  

★★★

 

 就寝前読書の一冊。1項目を見開き2頁で、インド・アジア・日本に亘る仏教史を108項目のトピックに分けて論述。新聞連載を元にしたため、この形になったようだ。今までの知識を再整理してくれる。

 30年ぐらい前、仙台のデパートで開かれたチベット展の販売コーナーで、30センチ四方のベージュの紙に黒色のみで印刷されたお守りというのを購入し、額に入れて長い間飾っていた。四隅に動物が描かれ、その動物ごとに、装飾を施された三重の同心円が、体の中央を覆うように重なっている。その円の中にはチベット文字が記されていた。四つの動物の中のひとつが馬であり、それが何を意味するのか気になっていながら、そのチベット文字を解読すれば済むはずなのに、そのままにして年月が過ぎた。

 それがこの本の第66項で分かった。このお守りといわれていたものは、マンダラだったのだ。金剛界の中尊大日如来の四方には、阿閦(東)、宝生(南)、阿弥陀(西)、不空(北)の四仏がいて、これらを合わせて金剛界マンダラの五仏と呼ぶ。四方の四仏はそれぞれ、象、馬、孔雀、ガルーダ鳥に乗っている。ところがこのお守りではその順番が違っていた。右下から時計回りに、馬、象、ガルーダ鳥(に相当か?)、孔雀となっている。これがまた謎になってしまった。

 また、日本の神社の鳥居の原型は、インドのトーラナという聖域に入る際の門だとか、釈尊の頭上の仏頂はヨーガ行者の特徴だとか様々な知識も得られる。星三つ半というところ。

 

▼酒肴全般

 種別は表示なしで、原材料名:米・米麹・醸造アルコールとあり/剣菱剣菱酒造株式会社/神戸市灘区 ★★★★

 

 樽の香が感じられ濃醇。酸味あり、後味がすっきりしていて雑味なし。

 これも今から31年前の1983年10月、来日したオーストラリア国立大のJ教授夫妻を、退官したチベット学の権威のH名誉教授宅に案内したことがあった。H先生の奥様は、J教授夫妻と英留学経験のある通訳の大学院生と私の4人のために額に汗をにじませながらお座敷天ぷらでもてなしてくださった。そのときに出された酒が剣菱だった。

 それ以前、剣菱は灘の有名な酒として名前は知られていたが、評判が上がった結果、量産され味が落ちたなどという噂もあった。ところがこのとき飲んだ燗酒のうまさに驚いた覚えがある。H先生は、私にしきりにJ先生にお酒を注ぐように言い、私がJ先生に注ごうとしてもやんわりと断られ、その繰り返しに閉口したが、ひとり密かに剣菱のうまさを味わっていた。

 地元のスーパーでも剣菱は酒売り場で見かけるが、あのときの味を思い出し飲んでみたいという気持ちはありながら、純米でも吟醸でもない酒なのに値段は安くなく、期待に外れることを危惧して手を出そうとは思わなかった。

 ところが、ある地元スーパーの酒売り場で一合または300ml詰めの純米酒吟醸酒が多種類売られていた中に剣菱の300ml瓶を発見。31年ぶりに飲んでみて期待は裏切られなかった。燗して味わおうと思いながらついつい飲み終えてしまった。ある店では剣菱の超特選(一升瓶・約2800円)というのを見つけた。いつか飲まなければ。

 

高*庵  消息

 

 しばらくお休みです。

 

 

蝉氷坊  消息

 

■最近読んだ本

『仏典をよむ 死からはじまる仏教史』/末木文美士新潮文庫/2014.5 ★★★

 

 今年5月、駅の書店で立ち読みしていたら長年気になっている『妙貞問答』(1605年)に触れていたのでつい買ってしまった。約半年かかってようやく読み終えた。

 古代から江戸時代まで、『遊行経』にはじまり『無量寿経』『法華経』『般若心経』『摩訶止観』『碧巌録』までを「第一部 死からはじまる仏教」として、『日本霊異記』から『山家学生式』『即身成仏義』『教行信証』『正法眼蔵』『立正安国論』『妙貞問答』までを「第2部 日本化する仏教」としてそれぞれ章を立てて取りあげている。

 第一部は古代仏教の中から大乗仏教が登場する歴史的・教学史的状況を、第二部は日本の仏教が民衆へと広がっていく過程で日本人の精神的土壌とどう関わっていくのかという問題を、視点の中心に据えている。とくに、第二部では本覚思想との関連にたびたび言及している。

 概説書ではあるが、他宗の祖録や経論に触れる機会がない(宗門の書物もそれほど読んでいるわけではない)自分にとってよき手引きになった。

 『妙貞問答』については後日書く機会がある。

 

●アート全般

 同じ原作による映画作品を続けて観た。WOWOWで同じ原作によるオリジナルとリメイクを取りあげた特集のひとつ(ほかに『許されざる者』『ロミオとジュリエット』など)。

 『華麗なるギャツビー』はロマンスである。だから時代背景や舞台設定が原作に忠実であってもなくても、ロマンスとしてよくできていればそれはそれでいい、というのが私の考え。ジャンルが違っても同じである。

 

1.映画『華麗なるギャツビー』/バズ・ラーマン監督/2013/WOWOW ★★★

 

 レオナルド・ディカプリオキャリー・マリガンが主人公を演じる2013年版。

 L.ディカプリオのギャツビーは優雅さの裏に隠された、生い立ちからくる粗野な性格をうまく演じている。物語の中ではそのことが重大な結果を招く重要な要素であって、このあたり彼はなかなか見せる。一方、C.マリガンが演じるデイジーは上流階級の生まれで、美貌の持ち主だが軽薄で気まぐれ屋という役どころ。容貌がそうは見えないところを演技力でカバーしている感じで、ミスキャストかと思う。

 映画評によると、ファッションなどに時代考証を無視したところがあるらしい(私には分からない)が、それが欠点だとは思わない。それより、引きに寄りにとやたら動き回るカメラが気になる。同じ監督の『ムーラン・ルージュ』ではともかく、このストーリーに果たして必要なのかどうか。

 

2.映画『華麗なるギャツビー』/ジャック・クレイトン監督/1974/WOWOW ★★★

 

 ロバート・レッドフォードミア・ファロー主演による1974年版。

 冒頭、人気のない大邸宅の部屋を風が吹き抜けるシーンから物語が始まる。机の上の食べかけのサンドイッチに止まった蝿。まわりには昔の恋人の写真や彼女の記事が載った新聞の切り抜きを貼ったスクラップブック。

 幼少年期の生い立ちを隠し、事業で成功したギャツビーは自宅で毎週桁違いに豪勢で放埒なバカ騒ぎパーティを開く。対岸の高級住宅地に住む昔の恋人に会うための彼流のやり方なのだ。パーティに集まる有名無名の老若男女は皆、金持ちの大盤振る舞いに群がる俗物で、蝿は彼らを象徴しているらしい。

 R.レッドフォードは顔もたたずまいも端正すぎて、影のある人物には見えないが野心よりも情熱を秘めた若者をかっこよく演じている。M.ファローは当時女優としての名声を得てもっともノっていた時期で、すでに一種の風格すら感じさせる。

 映画の出来としては2013年版、1974年版とも傑作とは言えないが、原作とともに長く生き残る作品であることは間違いない。

 

【編集後記】

 通算27号です。

 高倉健氏が亡くなりました。

 特別思い入れがある俳優ではないし、とくに印象に残っている映画もないのですが、それでも惜しいという気持ちがあります。映画人として、アジア、特に中国で絶大な人気と信頼のあるほとんど唯一の人物だといわれています。氏が海外の映画人との作品作りを企画していたと知れば、文化・芸術の範疇を超えた交流も期待できたと思うと残念です。

 さて、『あ・うん』(1989)という映画では親友役の板東英二富司純子夫婦との微妙な三角関係を演じましたが、原作の持つ居心地の悪さという点ではNHKドラマ版(1980)の方が上だったと思います(ドラマ版では高倉の役が杉浦直樹、坂東・富司夫婦がフランキー堺と吉村実子)。『鉄道員(ぽっぽや)』(1999)は世間で言われるほどの傑作とは思いませんでした。

 どちらも映画館で観ました。この2本をはじめ、氏の主演作の多くを降旗康男監督が撮っていますが、もっと若くて別な才能の監督との映画を観てみたかった気もします。

 巨星墜つ。邦画界の星がまたひとつ消えました。

 

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