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蝉氷坊のブログ

 文殊会通信(読書、映画、美術、酒をめぐる片言隻句)ぶらぶらあるき(県内篇・県外篇)梵夫の時間(おりおりの日誌)

文殊会通信第24号 2014年9月1日

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海*堂  消息

 

●最近読んだ本

論語』/加地伸行角川ソフィア文庫/2004.10 ★★★★

 

 角川ソフィア文庫のビギナーズ・クラシックスのシリーズ。この本も先月と同様、寝る前の20~30分の睡眠薬代わり。幼い孫がいる著者が、その孫が中学生になったときに読んでもらいたいという願いを込めて執筆したという通り、大変に分かり易く書かれている。特に第一部の「孔子の生涯」では、『論語』の言葉を交えながら丁寧に解説されている。おもしろいのは、君子と小人をそれぞれ教養人と、知識人と解釈していること。従来はそれぞれをりっぱな人、つまらない人と解説されることが多かったが、教養人とは知識に加え人格的に優れている人のこと、知識人とはただ知識があるだけで人間性や人格が必ずしも伴っていない人のことという。孔子は為政者の中を君子層と小人層とにわけて、為政者たるもの君子であれと説いた。

 第二部は『論語』の言葉の解説。分かり易い現代語訳だが、なぜこの漢文からこう解釈されるのか腑に落ちないこともあったが、『論語』は平安時代以来伝統的に『論語集解』や『論語集注』をはじめ数種の注釈書や復注によって読まれてきたことを初めて知った。

 

▼今読みかけの本

『葬儀と日本人 位牌の比較宗教史』/菊地章太/ちくま新書/2011.8

 

 位牌の起源と変遷を中心にしながら、儒道仏の葬儀の比較。残りあと4分の1なのに終えられない。

 

 

▼アート全般

1.仙台市博物館東日本大震災復興祈念特別展 奈良・国宝室生寺の仏たち」/2014年7月4日~8月24日 ★★★★

 

 国宝の釈迦如来座像、重文の地蔵菩薩立像ともにその迫力、量感,流麗な衣紋ともすばらしいが、特に国宝十一面観世音菩薩立像の、僅かにふくよかなカーブを描く頬や小さな唇の女性的な面立ち、凜としたたたずまいが美しい。その同じフロアには十二神将が間隔を開けて展示され、360度から見ることができる。そのどれもが個性的なポーズ、表情で躍動感にあふれている。

 

2.鷹山宇一記念美術館「日本近現代洋画への旅」/2014年7月19日~9月15日  

 ★★★

 

 よく知られた橋由一の『鮭図』、背景の木目も描かれたものだと思ってその精密描写に感心していたら、連れに本物の板であることを指摘された。日本の洋画黎明期の作品群を見ることができたのは初めてのことだと思う。泰西名画に範をとっただけあって暗い画面が多い。光の当て方も同じ。それでも油彩写実の先駆けの画家たちの意欲、挑戦に感じ入った。

 

 

高*庵  消息

 

 しばらくお休みです。

 

 

蝉氷坊  消息

 

●最近読んだ本

1.『枯木灘』『覇王の七日』中上健次選集(1)/中上健次小学館文庫 ★★★★

 

 自由な時間がたっぷりあった頃、その作品すべてを読んでみたいと思う作家が何人かあった。中上健次がそのひとり。

 実際にはこれまで『水の女』(短編集/1979)と『讃歌』(1990)の2作を読んだきりで、その時はいずれも中上健次だからという強い動機があったわけではなかった。ただ、読後の印象はどちらも強烈であった。

 昔何人かいた読んでみたい作家のさらに何人かは、最近死ぬまでに読んでおかなければならない作家になった。ネットの古本市を見ていたら、小学館文庫版の選集が安かったので買った。全集(集英社版/1995)や選集(インスクリプト/2013~現在刊行中)もいいが、結局全部は読まないだろう。大きな本、重い本は持ち歩くこともかなわない。

 『枯木灘』は中上の出世作といわれる作品。若い頃に読んだらきっと衝撃を受けたに違いない。その時仮に路地(被差別部落)を知らずとも、その輪郭はおぼろげにしかし確実にこころの奥底に刻みこまれ、仮に紀伊半島の海辺の小都市を知らずとも、風土や登場人物の息づかいは手に取るように感じさせてくれた、であろう、おそらく。そんな小説であった。静かに唸るほかない。

 読みながら連想した作品。『ギンネム屋敷』(又吉栄喜/1981)、『狐憑』(中島敦/1942)。それと、なぜか映画『ニュー・シネマ・パラダイス』の冒頭、主人公の老いた母親とカーテンが風にゆれるシーンが頭に浮かんだ(中上の物語世界が神話的と評されることからの連想?)。

 

2.『〈満洲〉の歴史』/小林英夫/講談社現代新書/2008.1 ★★★

 感想は前号に手短に書いたので省略。

 『満洲とは何だったのか』(雑誌『環』vol.10/藤原書店/2004)というタイトルの本を持っている。「何だったのか」というほどに「満洲」というのは、ある年代以上の日本人の心情を揺さぶるものがあるのだろう。

 

 

▼今読みかけの本

1.『アップデートする仏教』/藤田一照・山下良道/幻冬舎新書/2013.9

 

2.『美術手帖』6月号 特集「世界のアートスポット」/美術出版社

 それほど有名ではないが、優れた美術館が全国にはあるらしい(私が知らないだけなのだが)。本書はたまたま奈義町現代美術館(岡山県)を紹介した新聞記事を見て買ってみた。美術誌は高額なものも多く、毎号読むのはつらいがたまに読むとやはりおもしろい。

 

■酒肴全般

 テラノブレ・カルメネール・グラン・レゼルバ/赤ワイン/チリ ★★★

 

 頂きもの。濃厚な色と口あたり、口に広がる香りと味わいもなかなかのもの。買ってでも飲みたくなった。

 

【編集後記】

 通算24号です。

 読んだ小説を映画にするとしたらキャスティングは、と考えるのは楽しい。『枯木灘』は久々に読んだ長篇。最初に浮かんだのは、主人公の姉美恵を濱田マリに。実父浜村龍造は三浦友和なんか意外にいいんじゃないかなあ。肝心の主人公竹原秋幸がなかなか決まらない。まあ、大沢たかおあたりかな、とか…。どう思います?

 写真はわが家のゴールデンアカヒレ。5年以上生きています。

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蝉氷坊通信メンバー  蝉氷坊 1954年生   海*堂 1954年生   高*庵 1958年生   法*斎