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蝉氷坊のブログ

 文殊会通信(読書、映画、美術、酒をめぐる片言隻句)ぶらぶらあるき(県内篇・県外篇)梵夫の時間(おりおりの日誌)

文殊会通信第22号 2014年7月1日

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海*堂  消息

 

●最近読んだ本

 

 今月読了本は無し。

 

▼今読みかけの本

 

『葬儀と日本人 位牌の比較宗教史』/菊地章太/ちくま新書/2011.8

 

■アート全般

「生誕100年!植田正治のつくりかた」/岩手県立美術館/2014.4.12~6.8/★★★

 

 日本でもっとも有名なアマチュア写真家植田正治(1913-200)は、鳥取県境港市に生まれ、終世地元を拠点に活躍した。戦前から始まった写歴は20世紀の最後まで続いた。写真集も多数発刊されている。今回の展覧会では初めてその初期の作品を見ることができた。その中には現在ではデジタル処理で簡単にできる写真の合成や変形など実験的な技術を試みているものもある。心底写真が好きでたまらなかったのだろう。

 植田は砂丘の写真家というイメージがあるが、有名な「子狐登場」や「パパとママとコドモたち」など戦後の作品は砂の上が舞台だが、実際は近くの海岸で撮られたとのこと。

 晩年の代表作「砂丘モード」は、ファッションブランドや雑誌の依頼で撮られたものだが、シュールレアリスムの世界のようだ。これが砂丘の写真家のイメージをつくり、それが初期の作品にまで波及したらしい。この砂丘での作品は、植田が愛妻を亡くし失意の底にあったとき、広告業界のアートディレクターとなっていた息子の提案により創作意欲再開のきっかけとなったものだという。

 ほとんどがモノクロの作品だが、色彩が氾濫し視覚の過剰な刺激に慣らされた現代ではモノトーンの世界は新鮮だ。自分が写真を始めた頃を思い出す。そのうちモノクロフィルムを現像し、スキャナで読み込み、プリンターで出力しようと思って準備はしているのだが、「そのうち」がいつになることやら。

 

 

高*庵  消息

 

 今月はお休みです。

 

 

蝉氷坊  消息

 

●最近読んだ本

 

 今月はなし。

 

▼今読みかけの本

1.『ルポ精神医療につながれる子どもたち』/嶋田和子/彩流社/2013.12

 5ヶ月目。

 

2.『徳一と最澄 もう一つの正統仏教』/高橋富雄/中公新書/1990.6

 3ヶ月目。

 

3.『仏典をよむ 死からはじまる仏教史』/末木文美士新潮文庫/2014.5

 2ヶ月目。

 

■アート一般

1.『アナと雪の女王』/クリス・バック、ジェニファー・リー監督/アメリカ/2014/下田TOHOシネマ ★★★

 

 ディズニー・アニメは2003年の『ファインディング・ニモ』以来、久しぶり。家人に強く勧められ、吹き替え版を鑑賞(県内ではかなりのロングラン上映だが、現在は上映館すべて吹き替え版)。

 ストーリーは予想に反して案外新鮮で、ひねりも効いていておもしろく観た。吹き替えも主役のふたり(松たか子、神田沙也加)がうまくこなしている。松たか子が歌う日本語のテーマ曲が世界中で話題だということだが、セリフの自然さに比べてトーンが高くちょっと聴きづらい。

 雪の表現について。映画では雪が木から落ちるシーンが何度かあるが、この雪が春先の水分の多い雪に見えてしまう。文字通り凍るように冷たい氷の宮殿がある山の雪にはちょっと思えない(アメリカの雪は違うのかも)。

 予想したよりよかった、という意味で及第点。

 

2,『ゴジラ』60周年記念デジタルリマスター版/本多猪四郞監督/1954/下田TOHOシネマ ★★★★

 

 窓の外を見ると、街や田畑を破壊したゴジラが悠然と去って行くのが見える。自分と自分の家だけはなぜか無事なのだが、家族がいる気配はない。街の人たちもろとも皆ゴジラのために死んだのだ。恐しさと切なさの入り混じったような激しい感情の中で、ゴジラの後ろ姿を見ている自分がいる…。

 小中学生のころ、こんな夢を何度か見た記憶がある。映画の公開は私が生まれた年でリアルタイムで見ることはなく、明らかに後年テレビで見た映像にさまざまな情報が加わってこんな夢になるのだろう。

 映画やテレビでは、その内容がどうあれ登場する怪獣にどこか憐れみのような感情を抱くものなのだが、夢の中で私はゴジラに全くシンパシーを感じていない。

 今回見直して、この映画の素晴らしさを再認識した。エンターテイメントとしてはもちろん、反核兵器、反原子力のこころざしの高潔さに感動すら覚える。芹沢博士が消そうとするのは武器と設計図ばかりでない。それをまた作り出すかもしれない頭脳を持つ自分自身をも抹殺する。しかもそれを誰も止めようとしないところにこの映画のすごさがある。

 日本のゴジラ(とゴジラ映画)は永遠に不滅である。

 

3.『ヒッチコック』/サーシャ・ガヴァシ監督/アメリカ/2012/WOWOW ★★★

 

 人はだれしも知られたくない闇の部分があり人格者と見える表情の裏に鬱屈した欲望を隠している。多くのセレブの男性を陰で支えているのは妻の不断の努力と才覚である。というような、通俗的な映画ではもちろんない。仮にA.ヒッチコックもそうであったとしても、それは彼の作品への評価とは別の話である。

 ヒッチコックは『鳥』、『マーニー』のヒロイン、ティッピ・ヘドレンへの偏執的な愛情がスキャンダルになったこともある。私はいわゆるゴシップ記事に倣って「偏執的」と書いたが、有名人であれ一般人であれ愛情を寄せる人物へのアプローチが多少行き過ぎであっても誰がそれを責めることができよう(政治家や宗教家などは別として)。

 この映画の見どころは、ヒッチコック夫妻がさまざまな難題を乗り越えて一本の映画を作りあげる「映画人」としてのスタイル(生き方)にこそあると思える。俳優やスタッフとの関わりも難題の一つだろう。対立や確執もあれば、愛憎をめぐるハプニングもあるだろう(そして時には「行き過ぎた」行為も)。

 ヒッチコックの妻を演じたヘレン・ミレンの、抑制のきいた毅然とした演技がかっこいい。

 

 

【編集後記】

 通算22号です。

 インターネットの愉しみの一つは、ほんの微かな記憶の断片をたよりに目当てのものを見つけることです。例えば、映画なら記憶に残るシーンをヒントに、タイトルや俳優名を探し当てること。映画のデータベースを漠然と眺めているだけではたどり着けません。

 前にアート一般の欄に『ひとりぼっちの天使』という映画のことを書きました(第20号)が、これも憶えていた主題歌の歌詞にある主人公の名前から探した結果でした。

 ヘッダの写真は、おいらせ町にある阿光坊遺跡。周辺の天神森遺跡、十三森遺跡とを総称して阿光坊古墳群といい、7~9世紀のもので国の指定史跡になっています。

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蝉氷坊通信メンバー  蝉氷坊 1954年生   海*堂 1954年生   高*庵 1958年生   法*斎