蝉氷坊のブログ

 文殊会通信(読書、映画、美術、酒をめぐる片言隻句)ぶらぶらあるき(県内篇・県外篇)梵夫の時間(おりおりの日誌)

文殊会通信 第18号 2014年3月1日

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海*堂  消息

 

 

●最近読んだ本

『宇宙はなぜこのような宇宙なのか』/青木薫講談社現代新書/2013.7/★★★★

 

 著者はポピュラーサイエンスから物理学の専門書までの翻訳出版に携わってきた人。この本は副題に「人間原理宇宙論」とあるように、人間原理とはどんな考え方なのか、なぜそのような考え方が生まれたのか、そしてそれは現代の科学においてどのような意味を持つのかを宇宙論との関わりから明らかにしようとするもの。

 人間原理とは、物理学、特に宇宙論において、宇宙の構造の理由を人間の存在に求める考え方であるが、宇宙は人間が存在するように作ったとする神による創造論インテリジェントデザインなどは科学者によって蛇蝎のごとくに嫌われてきた。しかし今それが注目されてきている。と言っても以前のような神や創造主が前提されるものではない。1974年、ケンブリッジ大学のブランドン・カーターは、知的生命体が存在し得ないような宇宙は観測され得ない。よって、宇宙は知的生命体が存在するような構造をしていなければならないという「強い人間原理」を示した。

 その後、「インフレーション+ビッグバン」モデルが宇宙論の標準モデルになり、そこから「宇宙はわれわれの宇宙だけではない」という多宇宙ヴィジョンが自然に導き出されてきた。つまり、われわれが存在する宇宙はわれわれが観測できる宇宙であって、われわれが観測できない宇宙が無数に存在するという理論である。

 様々な科学者の説を整理して提示してくれてもよく理解できないところもあるが、これまで空想物語のように思っていた多宇宙理論が受け入れられつつあるとのことに驚いた。

 

▼今読みかけの本

『現代坐禅講義-只管打坐への道』/藤田一照/佼成出版社/2012.7

 

シリーズ大乗仏教大乗仏教とは何か』/監修 高崎直道/春秋社/2011.6

 

 全10巻のシリーズが今月に完結。『印度学佛教学研究』第61巻第2号(平成25年3月)の目次を見ていたら下田正弘「大乗仏教起源論再考」が目にとまった。著者はこの「シリーズ大乗仏教」の編者の一人。「前のシリーズから四半世紀以上の時を経るあいだに…研究状況はすっかり変貌した。日本におけるもっとも大きな変化は、平川彰によって立てられ日本においてほとんど定説となっていた在家・仏塔起源説がもはや支持されなくなったことであろう」とあるのに愕然とした。大学を離れてもはや30年、またも自分の不勉強に自己嫌悪。

 

■これから読む(購入する)予定の本

『仏典はどう漢訳されたのか -スートラが経典になるとき-』/船山徹/岩波書店/2013.12

 

~今月のお題~

●思い出の本(中学校編)

 

 中学校時代は特に読書した覚えがありません。

 

▼酒肴全般

純米吟醸 雪の茅舎/(株)齋彌酒造店/秋田県由利本荘市/★★★★

 

 先月取り上げた「山廃純米/雪の茅舎」の吟醸酒版。山廃純米と同様に清澄で淡麗。吟醸酒といっても香りは強くなく仄か。これもうまい酒。この透明感のある澄んだ味わいが気に入った。

 同時期に年末に頂戴した大吟醸菊駒を久しぶりに味わったが、どうも飲んだあとの後味に曇りがある。菊駒酒造と八戸酒類がもめる前の大吟醸菊駒はどんな味だったのか忘れてしまったが、現在の菊駒と同じなのだろうか。ともあれ雪の茅舎の清澄さが際立った。

 

 

高*庵  消息

 

 今月はお休みです。

 

 

蝉氷坊  消息

 

■最近読んだ本

 

 今月は読み終えた本がなかった。

 

●今読みかけの本

1.『満洲事変』/緒方貞子岩波現代文庫/2011.8

 5ヶ月目。なかなか進まない。

 

2.『朝鮮人徴兵・徴用に対する日本の戦後責任~戦後日本の二重基準~』/青柳敦子/風媒社/2005.5

 2ヶ月目。

 

3.『映画と戦争 撮る欲望/見る欲望』/奥村賢編/森話社/2009.8

 以前読みかけで放っておいたものを再読中。

 

4.『ルポ精神医療につながれる子どもたち』/嶋田和子/彩流社/2013.12

 著者は元ハンセン病療養所多摩全生園職員。精神医療の現場における薬害を告発する。

 

~今月のお題~

▼思い出の本(中学校編)

 

 中学時代の読書については、なぜかほとんど記憶がない。愛読した作家やジャンルもまったく思い出せない。

 いったい何を読んでいたのだろう。漫画はよく読んだ。私の中学時代(1967~69、昭和42~44)は少年漫画雑誌の最盛期であった。老舗のサンデー、マガジン、キングはスター作家をそろえて内容も充実していた。ジャンプの創刊は1968(昭和43)、チャンピオンはその翌年で、これからしばらくはこの5誌が覇を競っていくことになる。

 今突然、ヘッセの『車輪の下』を読んだことを思い出した。読後の、苦いというよりつらいと感じたことも思い出す。死というものを、今よりずっと真剣に考えていた気がする。

 

■アート一般

 

 観ようと思いながら長らく録画したままになっていた映画を3本観た。

 

『儀式』/大島渚監督/1971/WOWOW ★★★

 

 日本の古い屋敷のたたずまいはそれだけで威厳と美しさに満ちたものだが、結婚式や葬式の背景ともなるととりわけ映える。それを監督の凝った感覚で撮るのだから美しいのは当然かもしれない。

 しきたりや服装はもとより、家ごとの格や席の順序、しぐさや発言までが「儀礼に則った礼式」で決められる。儀式は冠婚葬祭の単なる決まりごとではなく、日常の行動や感情を規定する。背景であるはずの家も儀式の一部である。

 物語としておもしろい映画ではないけれど、観る者の意識を刺激し思考を強いるという意味では捨てがたい映画である。

 律子役の賀来敦子という女優がなかなかいい感じだが、ネットで調べても詳しい情報がないのが残念。

 

黒い罠』ディレクターズ・カット版/オーソン・ウェルズ監督/1958/アメリカ/WOWOW ★★★

 

 これも凝った映像がすばらしい一篇。モノクロなのに、画面が色彩を感じさせる。同じ主人公ながら、チャールトン・ヘストンオーソン・ウェルズに食われてしまっていてちょっと気の毒かも。マレーネ・ディートリヒはかっこいいけれど、さほど重要とは思われない配役でこれも損をしている感じ。

 1950年代のアメリカ映画はいい。

 ただ、この映画の製作会社は監督に無断で脚本を変更し、新たに撮影したシーンを入れ、その上再編集までして公開した(劇場公開版)。これに激怒したオーソン・ウェルズは、この映画を最後にアメリカの映画界と訣別した。このディレクターズ・カット版はウェルズの死後、彼自身が遺したメモに基づいて忠実に再構成されたものだという。

 

東京家族』/山田洋次監督/2013/WOWOW ★★

 

 おもしろくなかった。『東京物語』(小津安二郎監督、1953年)を山田洋次がどう料理するかが注目されたが、映画自体はかなりヒットした。

 ネット上で見る限り、評価は二分されているようだ。つまるところこの映画をどう観るかではなく、小津安二郎の『東京物語』をどう観ていたか、ということになるのかもしれない。

 私は『東京物語』に漂うある種の荒涼感を愛する。その荒涼感は東京にもあり広島にもあるはずのものである。だからこの映画では、滋子の夫や孫たちの、周吉夫婦に対するクールさがリアリティを持つ一方、居酒屋の女将や近所の人たちなど周辺の人たちの描き方にはやや類型的で雑な印象を受けた。

 キャスティングでは、蒼井優の好演だけが目についた。主人公夫婦(橋爪功吉行和子)はじめ総崩れの感は否めない。

 

●酒肴全般

特別純米酒 丹頂正宗/廣田酒造店/岩手県紫波町/★★★

 

 頂き物。いつもおいしいお酒をくれるK氏お勧めの一品とのこと。日本酒度+13で超辛口、とあるが最初の一杯目は確かにズバッときたが、二杯目からは辛口を意識せずに飲める。私は最近やや甘めを好んでいるが、これは飽きの来ないスッキリした辛さだと思う。

 

ワカサギ/小川原湖

 

 教区の若い方(やや中年)から、獲れたて(釣りたて)のワカサギをいただきました。どうやって食べようか思案の末、マリネにしてみました。ワインにぴったり、そうですが実際には酒の肴にはならず、ご飯のおかずになりました。美味。

 

 

【編集後記】

 通算18号です。

 東日本大震災からもうすぐ丸3年。今年も町の有志と「慰霊と希望の集い」というささやかな集会を開きます。ヘッダの写真は、去年参加者に書いてもらった一文字写経の一部。

 会合などで会う方から大雪を心配していただきましたが、自分のところは大雪はいつものことで気にしてませんよ、と答えています。2月以降は降雪の日数が少なく、積雪も去年に比べてかなり少なめでした。ただ気温はかなり低く、年齢のせいもあるのか身に応えます。でもまあ、除雪よりはましか。

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蝉氷坊通信メンバー  蝉氷坊 1954年生   海*堂 1954年生   高*庵 1958年生   法*斎