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蝉氷坊のブログ

 文殊会通信(読書、映画、美術、酒をめぐる片言隻句)ぶらぶらあるき(県内篇・県外篇)梵夫の時間(おりおりの日誌)

文殊会通信 第16号 2014年1月1日

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海*堂  消息

 

 

●最近読んだ本

『葬式仏教の誕生』/松尾剛次平凡社新書/2011.8 ★★★★

 

 つい持ち歩きやすい新書に手が伸びる。題名通りの内容だが、古代仏教の穢れに対する恐れや、阿弥陀信仰と弥勒信仰の深い関わり、そして仏教が組織的に葬儀に関わることになったのは鎌倉仏教からであり、その葬式仏教は革命的な意義があったとする。

 たしかに鎌倉仏教時代以前は、行基や空也など聖といわれたような私度僧が、慈悲の発露として、また人々の求めに応じて葬儀を行ってきただけだった。

 それに対し鎌倉仏教の僧侶は、官僧の制約から自由になり、死穢をものともせずに人々の願いに応じて葬送儀礼を行うようになった。その背景には死穢観や死体観についての新しい観念が必要だった。従って、仏教者が葬式に従事すること自体は決して仏教者の堕落ではなく、きわめて重要かつ革新的な活動であったと言う。

 しかし著者は、近世以前の仏教の世界観が信じられなくなった現代において、世界観、死生観が多様化した現代では葬式の意味も変化し、「葬式が、人間の根源的な要求に応える重要な儀礼であったとしても、それを僧侶が行わなくても良いわけである。他の宗教でも、無宗教葬(友人葬)でも良いわけである」と言う。

「葬式仏教」といわれるのは、葬式法事などにかまけて、悩みながら生きている現代人の救済願望に応えようとしないことに対する批判であり、日本仏教は「葬式仏教」から「生活仏教」へ変わっていくときに来ているのだろうと言う。

 しかし、葬儀が、他の宗教で行われることについてはともかく、無宗教葬ということがあり得るのだろうか。無宗教葬で果たして遺族の心は癒やされるのだろうかと思いつつも、この多様化した世界観、死生観の中では人々の思いも変わっていくのだろうし、それに対応していかなくてはならない時代にきていることは間違いないのだろう。

 

▼今読みかけの本

『現代坐禅講義-只管打坐への道』/藤田一照/佼成出版社/2012.7

 

 情けないことにまだ読み終わらない。厚い本なので持ち歩きにくく、机の上で読むことになるのだが、その机の前に落ち着いて座る機会がここしばらくどうしてもとれなかった。従って読み進めなかったのだが、この状態がいつまで続くことか。

 

■酒肴全般

1.純米大吟醸 一ノ蔵『笙鼓』/株式会社一ノ蔵/宮城県大崎市 ★★★★

 

 頂戴物。1月2日に家族集まり開栓。日本酒度-1~+1。これぐらいがちょうどいいようだ。吟醸香が口中に広がり、芳醇な味わい。飲んですぐうまいと思った。さすが一ノ蔵の最高ランク品。

 

2.吟醸酒 日高見/平孝酒造/宮城県石巻市 ★★★★

 

 震災復興のためになどと言い訳しながら仙台から宮城県の酒を買って来てもらった。日高見も今まで様々飲んできた。どれもうまい酒だったが、蔵元は大津波で壊滅的な被害を受けた。それでもそこから立ち直った酒蔵の一つ。これも1月2日に開栓。日本酒度は+4。淡麗で少し辛口。さっぱりした飲み口。一ノ蔵 『笙鼓』を飲んだ後だったので、辛口が目立ったが、これもうまい酒だった。

 

 この日は、ビールから始まり、甲州ワイン、月の桂などもあって10年ぶりぐらいの大酒を飲み、堪能し尽くした。翌朝は定時に起床したが、辛かった。まったく久しぶりの二日酔い。それでも九時半から仕事スタート。その後本年の仕事始めは夕方まで続いた。

 

 

高*庵  消息

 

 

●最近読んだ本

 

 残念ながら何もありません。

 住職になって4ヶ月近く。本というものを(詩歌の類いすら)何一つ読まない生活になってしまいました。

 

▼今読みかけの本

 

 上記の理由で特になし。

 

■これから読む予定の本

正法眼蔵 行持の巻』

 

 特に理由はないのですが、芙蓉道楷(ふよう・どうかい)禅師の「山僧行業取ること無くして、かたじけなく山門に主たり。云々」を読んで、自己策励の鞭としたいとの思いなど…。

 なんだか高祖道元禅師より3年も長生きして、それこそ「行業取ること無くして」生きることが少々苦しくなってきました。

 

~今月のお題~

●私の人生を変えた本

 

 特に自分の人生、並びに人生観に大きな変革をもたらした本というのは思い当たりません。

 色んな書物や経験が、少しずつ影響して、今の自分をつくっているんでしょうが…。

 

▼アート一般

 

 ちょうど6年前、49歳の誕生日から、一日一点の美術品(当然複製ですが)を見て、記録することを自分に課してきましたが、それも一ヶ月あまり前に怠りがちになり、止めてしまいました。

 私は怠け者なもので、自分に何かを課さないと、何もしないのですが、それでもやっぱり忙しすぎると駄目ですね。

 なんだか残念ですが、仕方ありません。

 

 

蝉氷坊  消息

 

 

■最近読んだ本

1.『ブレードランナーの未来世紀』/町山智浩/洋泉社/2006.1 ★★★

 

 最近読書していて実感するのは、著者の年齢がどんどん下がっている、つまり今をときめく作家や研究者の年齢を自分はすでに超えている、自分が高齢化しているということ。

 テレビの世界では、作り手も出演者も40代までというのが常識だとどこかで読んだ。少なくとも作り手は50代以上がほとんどいないのだそうだ。出演者もレギュラーでは50代以上は特別で、たいていはゲストとして出る程度というのが実状という。なるほど、そういうものかも知れないと思う。

 さて本書の副題は「〈映画の見方〉がわかる本 80年代アメリカ映画カルト・ムービー篇」。取りあげられているのは1982~86に公開された映画、『ビデオドローム』『グレムリン』『ターミネーター』『未来世紀ブラジル』『プラトーン』『ブルーベルベット』『ロボコップ』『ブレードランナー』の8本。

 著者は1962年生まれの映画評論家。音楽をCDで聴きはじめた世代、ヒット作がレンタルビデオで観られるようになった世代である。物書きとしての50代前半という年齢は、中堅というよりベテランの域だろう。

 著者より8歳年長の私の感覚では、1980年代はまだ古くはない。上記の映画のいくつかは、映像的にはCG多用から3D全盛の現代映画につながり、設定も近未来(ということは時代設定が現在あたりか)を舞台にしたものが多い。しかし、現代のクリエーターたちからすれば、これらの映画はすでに古典である。1980年代をパーソナルコンピュータの黎明期とみるか、インターネットもない旧時代(1990年代末期ですら低速なダイヤルアップだった)とみるかは雲泥の差であろう。

 

2.『「セックス・シンボル」から「女神」へ~マリリン・モンローの世界~』/亀井俊介/昭和堂/2010.1 ★★★★

 

 NHKBSの世界のドキュメンタリーで、「マリリン・モンロー 最後の告白」という番組を観た(2013年7月1日放送)。晩年精神科医に語った告白テープをもとに、波乱の生涯の真実に迫ろうとする番組(2008年フランス制作)。

 マリリン・モンロー(以下MM)は1926年に生まれ、1962年36歳で亡くなった。1932年生まれの著者はMMの同時代を生き、その死のニュースに衝撃を受けた人である。私の世代(1950年代)にとって、MMはすでに伝説であり、記号であった。私ならMMと聞いて真っ先に思い浮かべるのは、アンディ・ウォーホルのイラストレーションである。映画はタイトルは知っていても、ちゃんと観たものがひとつもない。

 豊満なからだとちょっと間抜けな頭脳というキャラクター。それは多くの男性が理想とする性的好奇心の対象としてのイメージである。本書はこの伝説化され、記号化された虚像を壊し、MMの実像を伝えたい、という強い意思で書かれている。

 うらおもてのない性格、女優や歌手としての才能、弱い者に注ぐ愛情、勤勉で努力家でもあった日常生活、それらは生前意図的に無視されたものだ。著者はMMに、アメリカの文化と精神風土の最も優れた部分をみている。

 同じ著者による『マリリン・モンロー』(岩波新書/1987.7)、『アメリカでいちばん美しい人』(岩波書店/2004.12)も併読。

 

●今読みかけの本

1.『満洲事変』/緒方貞子岩波現代文庫/2011.8

2.『道元を語る』/伊藤玄二郎編/かまくら春秋社/2003.4

3.『朝鮮人徴兵・徴用に対する日本の戦後責任~戦後日本の二重基準~』/青柳敦子/風媒社/2005.5

4.『とうほく妖怪図鑑』/山口敏太郎無明舎出版/2003.7

5.『島が動いた~「小島の春」はいま~』/加賀田一/文芸社/2000.10

 

~今月のお題~

▼私の人生を変えた本

『三光 日本人の中国における戦争犯罪の告白』/神吉晴夫編/カッパブックス/1963

 

 三光作戦日中戦争(1937~1945)当時、抗日ゲリラに対して日本陸軍がとった軍事作戦を指す中国側の呼称である。三光とは「殺し尽くす、焼き尽くす、奪い尽くす」(「…光」は…し尽くすの意味)ことをいう。

 この本を読んだのは高校1年の時。私の高校には一種の畏敬をもって「社研」と呼ばれた社会問題研究会があった。東大紛争、安保闘争が終わってまもない1973年、世の中にまだその余燼がくすぶっていた時期である。その社研にいる同級生が勧めてくれたのが本書である。

 ことばにできないほどのショックを受けた。グラビアの虐殺写真は、その後何年も記憶から消えなかった。戦争や戦争犯罪の何たるかも知らないままに読んだ当時の私には、理由もなく殺されてしまうことへの恐怖と、戦争で狂気に陥る人間の弱さへの不信感ばかりが心に残った。

 この時期、『夜と霧』(V.フランクル/霜山徳爾訳)などの戦争物に手を伸ばしたのは本書を読んだから。しかし、本書から受けたショックはほかのどの本よりも飛び抜けて強かった。

 宗教に対する漠然とした無力感のようなものを、今にして思えば寺の子として生まれた境遇の中で、この時期感じていた。宗教に向きあうきっかけになった、という意味で私の人生を変えた本の一冊。

 

■アート一般

『かぐや姫の物語』/高畑勲監督/2013/TOHOシネマ下田 ★★★

 

 予告編で観た疾走するシーンの印象が強く、さぞや波乱に満ちた展開があるのだろうと期待した予想ははずれた。

 かぐや姫の犯した罪と罰。最初に犯した罪は不明。罰として地上に送られたのだとしたら、地上での再度の罪(結婚を申し込んだ五人のうち一人が死ぬこと、あるいは五人に無理難題を押しつけて苦しめたこと自体?)の罰はどうなるのか。

 映像はすばらしい。大きな和紙に描かれた紙芝居。喩えて言えば、野原に屋根のない広い広い座敷があり、降り注ぐ陽光の下で四方に立てられた障子に描かれた淡彩画を観るような。

 

●酒肴全般

 佐藤企 特別純米酒/鳩正宗(株)/青森県十和田市 ★★★

 

 佐藤企は「さとう・たくみ」と読む。南部杜氏の佐藤企が自家栽培米(麹米が華吹雪、掛米がまっしぐら、いずれも青森米品種)にこだわって、自分の名前を冠して造り上げたというメーカー期待の新ブランド。最初の一口、きりりと引きしまった軽い辛口でいい感じ。飲み進んでも辛口加減が薄まらず、これもいい感じ。今後に期待したい。

 

【編集後記】

 あけましておめでとうございます。

 55歳から65歳までの10年間は、健康で長生きできるかどうかを決める最終的な決定期間だと思っている私は、今年その折り返し地点に迎えます。この5年間を振り返ってみると心構えは★★★★、実行性は★★★、結果は何とか★★★★にいけそうかな、と甘めの自己採点をしています。

 ヘッダの写真は今年の新年未明、元朝詣りの参道風景です。

 

 通算16号になりました。本年もよろしくおつき合いください。

 

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