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蝉氷坊のブログ

 文殊会通信(読書、映画、美術、酒をめぐる片言隻句)ぶらぶらあるき(県内篇・県外篇)梵夫の時間(おりおりの日誌)

文殊会通信 第11号 2013年8月1日

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海*堂  消息

 

●最近読んだ本

『反省させると犯罪者になります』/岡本茂樹/新潮新書/2013.5 ★★★★

 

 何時の頃からか書籍のタイトルに単語ではなく文章を用いることが流布してきたが、この本も同例で、しかも逆説的表現で人目を引こうとするあざとさが感じられなくもない。ところが読んでみるとおもしろい。著者の主張はまさにタイトルどおりなのである。著者は大学で教鞭を執っているが、この本は刑務所における受刑者の更生を支援する現場から生まれたものである。教育関係、警察・司法関係、保護司そして子を持つ親必読の書。

 一般に犯罪や非行、問題行動を起こした人は、周囲から反省を迫られる。その人は、事件直後は後悔をし、これからの自分の行く末を考えて不安や恐怖にかられたり、自己の保身を優先した考え方をしたりすることが普通である。その時に反省を迫られても、表面的な反省の言葉や一時しのぎの反省文を書くことになる。そのことによって自己の問題行動を振り返るよりも先に、自身の内面的な問題に蓋をして心を抑圧してしまう。その結果心の奥底から反省することなく、また事件を起こしてしまうことになる。すぐに「反省の言葉」を述べる加害者は悪質であるとまで著者は言う。

 加害者は例外なく親からの虐待、両親の離婚、いじめ、貧困など不遇な環境の中で育っている。その加害者の心の中に鬱積している被害者性に目を向けなければならない。そして過去の自分自身の生き方の問題を洞察し、幼少期から受け続け心の底に秘めたままの心の痛みや否定的感情に気づくことから真の反省が始まるという。

 加害者が自己に向き合い、その偏った考え方や価値観がどのような過程で作られていったのかを自分で理解していった結果、自然と心の底から湧き上がってくる「罪の意識」こそ、本当の「反省」なのであり、ここが本格的な更生の出発点となると言う。

 さらに「頑張るしつけが犯罪者をつくる」、「我が子と自分を犯罪者にしないために」と二つの章に有益な提言をこめている。

 この本のタイトルの付け方から受けるイメージとは異なり、真摯で誠実な著者の人柄が伝わってくる本である。

 

▼今読みかけの本

『宇宙になぜ我々が存在するのか』/村山斉/講談社ブルーバックス/2013.1 

 

 寝る前の時間数頁を読む、を暫く続けている。記述は平易だが、なじみのない用語に記憶力の低下が加わり、読み始めてからすぐに前の頁に戻ってそれまでの内容を改めて理解してから次にすすむということの繰り返しで時間がかかるが、宇宙の起源の謎を解いていくというのだから興味は尽きない。

 

~今月のお題~

■時間があったらもう一度読みたい(観たい)作品(第2回)

 

 初めての長編小説は、暗黒の高校時代、1年の3学期の寒い時期に読んだドストエフスキーの『罪と罰岩波文庫全3巻、中村白葉訳。その後米川正夫江川卓亀山郁夫などの翻訳が出版された。近年TVドラマにもなったようだが見てはいない。ラスコリニコフとペテルブルグと言う名詞と金貸しの老婆殺しということだけしか思い出せない。当時どれほど理解できたかわからないが、陰鬱な曇り空に包まれた極寒のロシアの重苦しさと、最後の微かな平安と言うイメージだけが胸に残っていた。

 

●アート全般

 

 身近に開催されているのに行きたくても行けないままの展覧会。

 

1.八戸市美術館 特別展 「ジパング展~沸騰する日本の現代アート~」

   平成25年7月13日(土)~平成25年8月25日(日)

 

2.八戸市 帆風美術館 日本美術百科辞展・第三巻『筆墨のパワー』後期

   平成25年4月20日(土)~平成25年10月20日(日)

 

 3.八戸クリニック街かどミュージアム 

   2F「懐かしの洋画ポスター展」

    平成25年7月13日(土)~平成25年8月25日(日)

   1F 図書・展示コーナー  

       吉田初三郎常設展示コーナー

 

【編集人から】

 吉田初三郎(1884~1955)は、生涯に3000点にのぼる鳥瞰図を描いたといわれています。少し古い世代の人なら、生涯に一度はこの人の絵を眼にしているはずです。

 以前『満洲朝鮮復刻時刻表』(日本鉄道旅行地図編集部編/新潮社/2009.11)なる本を買いました。昭和10年代の時刻表を体裁もそのままに復刻したものです。この本のカバー(箱)を吉田の描いた戦前の大連市の鳥瞰図が飾っています。整然とした街路の中に、東西両本願寺と大連寺が広大な寺域を占めているのがひときわ目を惹きます。

 

▼酒肴全般

大吟醸/蒼天伝/男山本店/宮城県気仙沼市 ★★★★

 

 この頃は、東日本大震災被災地復興のためになどと言い訳をしながら宮城県の酒を飲むことが多い。今月は仙台で購入してきてもらった「蒼天伝」。「男山」という銘柄の酒は、北海道から九州まで日本全国にあるようだ。八戸は「陸奥男山」、この気仙沼の男山は「陸前男山、伏見男山」という商品名。

 ホームページを見ると、この「蒼天伝」は、大吟醸、純米大吟醸から本醸造まで7種類もあって、4種類だけの「男山」銘柄よりも力を入れている。今回はその中の大吟醸。大吟醸によくあるフルーティな香りなどはなくて、落ち着いた爽やかな香りがそっとあり、酸味は微かで少し甘めの味わい。淡麗でもなく濃醇でもなく中庸の美酒で飲み飽きない。もう少し、もうちょっとを繰り返しているうちに四合瓶の4分の3も飲んでしまっていた。後悔した。

 

 

高*庵  消息

 

■最近読んだ本

 

 なしです。

 

●これから読む本

 

 読みかけだらけです。本はもう買わないつもりですが…。

 

~今月のお題~

▼時間があったらもう一度読みたい(観たい)作品(第2回)

 宮沢賢治の童話類

 

 「銀河鉄道の夜」「風の又三郎」「なめとこ山の熊」「よだかの星」「グスコーリブドリの伝記」などなどゆっくり味読してみたいと思います。

 

【編集人から】

 子どもが小さい頃、読み聞かせ(?)のためにと俳優が朗読した賢治の作品集を買いました。「オッペルと象」の宇野重吉、「虔十公園林」の長岡輝子、「春と修羅」の渡辺謙、「紫紺染について」の仲谷昇などが特に印象に残ります。中でも田中裕子の「銀河鉄道の夜」は、泣き出したいのをこらえるときのような、ジョバンニの張りつめた思いが伝わってくるすばらしい朗読でした。

 

■アート全般

 

 今月も田能村竹田の絵画を観て過ごしました。

 竹田など、イメージ的にずいぶん老齢まで生きた感じがするのですが、調べてみると私より三歳上で亡くなってるんですね。

 ちょうど今の私の年くらい(数え年56才)が、生涯のピークで代表作を次々と描き上げていってます。

 ただ、先月も書いたとおり、日本の絵画は軸物(竪長)や絵巻(横長)が多いものですからどうも現物を見ない限り、中々印刷物だけでは物足りないものがあります。

 実際、自分でコレクションすればいいのでしょうが、巨額の費用と地方のハンディ、その他諸々の事情で美術品の収集は手をつけておりません。

 

●酒肴全般

 加賀纏(かがまとい) 純米辛口/日本酒度+4/福光屋/金沢市

 

 菊水の辛口 本醸造/菊水酒造/新潟県新発田市

 

 七賢 純米酒/山梨銘醸/山梨県北杜市

 

 3つとも淡麗辛口。近所のスーパーで買い求めます。

 どれもそれなりにおいしいと思う反面、これでなくては…というほどでもないような…。口がぜいたくになってきてるのかもしれません。

 

 

蝉氷坊  消息

 

▼最近読んだ本

 

 読了した本はありませんでした。

 

■今読みかけの本

1.『夜と霧』新版/V.E.フランクル/池田香代子訳/みすず書房/2002.11

 

 旧版を読んだのは高校生のとき。カッパブックスの『三光』も同じ時期に読んだ。どちらも自分の人格の一部に確実に食い込んだ本として記憶していきたい。

 

2.『紫禁城の黄昏』/R.ジョンストン/入江曜子・春名徹訳/岩波文庫/1989.2

 

3.『〈満洲〉の歴史』/小林英夫講談社現代新書/2008.11

 

●この一冊

1.『死を見つめる仕事』/猪瀬直樹/新潮社/1987.8

 

 前々回は「アラ葬」、前回は「アラ宗」、今回は「アラ死」(アラウンド死)本をいくつか。

 今をときめく東京都知事になった著者による、死に関わる仕事をしている11人のプロフェッショナルたちへのインタビュー集。ノンフィクションだがエンタメ要素を含んだ、バブル期まっただ中に出た本である。目次の一部からおよその内容を想像してほしい。

 ・舞台演出家から転職した最後の死に顔化粧師 籠原博氏の――唇に紅を、心に愛を

 ・頭蓋骨から生前の顔を甦らせる復顔師 長安周一氏の――ちょっと怖い話

 ・尊厳死運動のパイオニア 太田典礼氏の――宗教無用の仙人論

など。

 「死に顔化粧師」とは、納棺前に遺体を拭き清めて姿勢を矯正し、顔や髪などを整える人だが、「最後の」とあるように昔からある職業なのだろう。その仕事の一部を、今は納棺師と呼ばれる人たちが引き継いでいる。

 人の死を旅立ちという場合があるが、旅は「ハレ」すなわち非日常であるから化粧して着飾るのが正しい。そこに必然的に専門の職業が生まれる。これは宗教儀式というより一種の生活儀礼であるだろう。

 石ノ森章太郎の漫画に『化粧師(けわいし)』という作品がある。役者や上流階級の女たちにメーキャップを施し、幸運をも与えるという男が主人公の物語である。これも幸運はつけ足しで、(日常とは違う)化粧が先にあることに意味があるだろう。

 死は科学的に進行する生体分解現象である。本書を読むと、遺された周囲の人間の感情の方が、死体(遺体)の処理よりやっかいであることを痛感する。

 

2.『死体洗いのアルバイト』/坂木俊公/イースト・プレス/2003.8

 

 ある研修会で、大本山総持寺で長く布教師を務めた老師から都会の人の方が田舎の人よりも迷信深く、俗信のたぐいを信じ込みやすい、という話を聞いた。

 そうかもしれないと思う。都市伝説とは、その話が都会に存在するからではなく、都会が作りだした話だから、ということか。

 タイトルは、大江健三郎のデビュー作『死者の奢り』を思い起こさせる(アルバイトの内容は死体洗いではなく死体運びだが)。大学病院の解剖用死体やその死体を保管するためのプールを洗浄するアルバイトがあり、しかも報酬はかなり高額である。募集はあまりないが、仮にありついても誰もがすぐやめる、恐ろしさのあまり…。

 本書は、個人のホームページが一般化し、プロフやブログが普及しだした時期の人気サイトに掲載された都市伝説をまとめたもの。病院や医療に関する話がほとんどだが、下品なものも多いので誰にでも勧められる本ではない。本欄に取りあげる理由は、エセ宗教を学ぶための格好の教材だと思うから。

 ほかに死をめぐる宗教的でない本として、これも少し古いが『死ぬまでになすべきこと』(式田和子/主婦の友社/1992)をあげたい。こちらは当時いろいろな人に勧めた記憶がある。同種の本はその後多く出版されている。

 

~今月のお題~

▼時間があったらもう一度読みたい(観たい)作品(第2回)

1.『三国志』/羅貫中小川環樹ほか訳/岩波文庫

 

 『三国志演義』の名でも知られるあまりにも有名な歴史小説。

 さまざまな類書を読んだ(横山光輝の漫画版、立間祥介訳の平凡社版など)が、初めて読んだ岩波文庫版がその挿絵とともに印象深い(因みに、挿絵を画いた葛飾戴斗[かつしか・たいと]は北斎門下だとか)。

 信義に生きる劉備と野望に燃える曹操、智謀の周瑜諸葛孔明、武勇の関羽張飛。彼ら主要な人物のほか、趙雲夏侯惇呂布董卓ら個性的な人物たちが入り乱れて活躍する物語は、まさに大河ロマンと呼ぶにふさわしい。

 登場人物がすこぶる多い。当時わら半紙に登場人物の名を書き出し、章立てや国別に分類したものを今も持っている。章のタイトルを見ても内容をほとんど思い出せないが、人名は結構記憶にある。

 エピソードとして一番に浮かぶのは、曹操臣下の猛将夏侯惇(かこう・とん)が自らの眼球を喰らうシーン(第十八回)。馬上にあって敵陣めがけて疾走する夏侯惇は、敵将に左眼を射貫かれる。刺さった矢をやおら眼球ごと引き抜くと「父の精、母の血、棄つるべからず」と叫んでこの敵の首を討ち取る。

 「親からもらったこの体、なんで粗末にできようか」。朝ドラ『海女ちゃん』のセリフを借りれば、かっけぇー(カッコイイ)。

 孔子のことばに「身体髪膚、これを父母に受く、あえて毀傷(きしょう)せざるは孝の始めなり」というのがあるが、意図するところは同じだろう。ヨーロッパの騎士物語にもこれに相応するシーンやことばがあるのか、知りたいところだ。

 

2.『アラビアのロレンス』/デヴィッド・リーン/イギリス/1962

 

 1920年代、オスマン帝国から独立しようとするアラブ人の反乱を描いた作品で、一大叙事詩というべき歴史大作映画。

 トマス・エドワード・ロレンス本人が書いた原作をもとに、1962年にD.リーンが作ったオリジナル版は222分。その後すぐに約20分カットされ、さらに上映時間を短縮するために次々にカットされたという。

 1988年にS.スピルバーグ、M.スコセッシらの働きかけで復元、再編集が行われ完全版としてよみがえった。完全版は1995年に日本でも公開、2008年にはニュープリント版が公開された。

 この完全版は2011年にNHKで放映されたときの録画が手元にある。雑事を排して、約4時間ゆ~っくり観たい。

 

■アート一般

 

若冲が来てくれました~プライスコレクション 江戸絵画の美と生命~」/岩手県立美術館 ★★★★

 

 伊藤若冲を中心にした江戸絵画の魅力を紹介する美術展。

 この展覧会の特徴は、7つのテーマで作品が分けられていることと、ひとつひとつの作品に子どもでも理解できる平易なことばで副題をつけていること。

 前者に関して。岩手会場は順路としても、空間の区切り方からも分かりにくかったように思う。校外学習とおぼしきノートに書き込みしている中高生が大勢いたが、会場をジグザグに移動している子が多い。仕切りが少ないせいで、かなり離れたところも見通せるので目立つ作品に移動してしまうのであろう。

 とはいえ、これだけの質量の作品群を当日800円という低料金で(高校生以下は無料)、しかも地方で観ることができる幸運はめったにない。所蔵するプライス夫妻はじめ主催者の良心と好意に感謝。

 私が行った日は工事中とかで常設展は観られないのは惜しかったが、それほどの混雑もなく、割にゆっくりと観ることができたのもよかった。

 展示作品の中では、プライス氏が江戸絵画のコレクションを始めるきっかけとなったという『葡萄図』が特に印象深い。

 この絵の水墨画とも西洋絵画とも違う美しさは、どこにでもあるものを精緻に描くことでもたらされた。若冲にとって、精緻とは正確ではなく誠実と同義、それゆえに探究というより求道に近いのではないか、と私には思える。

 現在は福島市の県立美術館で開催している(9月23日まで)。

 

●酒肴全般

あさ開 蔵内純米原酒/(株)あさ開/岩手県 ★★★★

 

 蔵元の工場見学をした。前晩の夕食で飲んだこの酒がやたらに旨かったので確認しようと思ったが、敷地内にあるショップの試飲コーナーでは飲めなかった。原酒のためビン詰めしてすぐに封印するのだそうだ(商品は新聞紙で包んである)。このショップで買うか、取り扱う飲食店で飲むしかないという。安くはないが2本買った(高いというほどでもない)。

 試飲できる銘柄をいくつか飲んだが、値の張るものや製造にこだわったものが口に合うとは限らないのが日本酒の妙である。試飲した中では、大吟醸「南部流伝承造り」という銘柄が辛口なのに「あたり」が柔らかく私には好ましい。

 もっとも、酒の味はまざまな条件に左右される。前晩の酒の味をあとで思い出せるほどに旨く感じたのは、あたりが薄暗くなる時刻に、そこそこに空腹感もあり、おいしい肴がならんだ宴席だったからだろう。

 

【編集後記】
 数えて第11号になりました。

 日本画家福田平八郎に「雨」という作品があります。アトリエから見える屋根瓦に落ちる雨滴が、生きものの足跡のように見えたことに触発されて描かれた絵です。冒頭の写真はその絵のイメージを狙った、恐山事務所の瓦屋根です。

 以前から勧められていたFB(フェイスブック)、最近思い立って始めました。もともと性格が無精な自分に、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)は向いているとは思わないけれど、それでも1対1の交流では得られないものもありそうです。

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蝉氷坊通信メンバー  蝉氷坊 1954年生   海*堂 1954年生   高*庵 1958年生   法*斎