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蝉氷坊のブログ

 文殊会通信(読書、映画、美術、酒をめぐる片言隻句)ぶらぶらあるき(県内篇・県外篇)梵夫の時間(おりおりの日誌)

文殊会通信 第3号2012年12月1日

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From 海*堂

 

●最近読んだ本

『空海の風景』上・下/司馬遼太郎/中公文庫/1978.1 ★★★★

 

 購入年は1983年(昭和58年)。以前、上巻の半分程度まで読んだが、かなり長い間放っておいた。当時はあまり面白みが感じられなかったからだろう。空海の一生を描いた、伝記と評伝と小説を合わせたような作品。空海の年譜には空白の部分が、特に若い頃に多い。その謎の空白部分や史料と史料の間隙を著者の想像力と該博な知識で埋めていき、1200年前の空海像を浮かび上がらせようとする。ちなみにこの「風景」という題を付したのは、「空海の時代が遠きに過ぎ…空海という人物の声容をなま身の感覚で感じとることはとうてい不可能で、せめてかれが存在した時代の…かれにちなんだ風景をつぎつぎに想像してゆくことによって…空海が現れはしまいか」と思ったからとのこと。

 

 文殊会通信1号の『銃・病原菌・鉄』の評価を★★★★★に訂正します。時間空間のスケールの大きさ、テーマの壮大さ、読みやすさを再認識。

 

【編集人から】

 今日(5日)NHKプレミアムアーカイブスで、「空海 至宝と人生「第3集 ”曼荼羅の宇宙”」」を放映していましたね。再放送もやるようです。「第1集 ”仏像革命”」(12月11日午前2時5分)、「第2集 ”名筆の誕生”」(12月12日午前2時45分)、「第3集」(12月13日午前1時30分)。

 

 

▼今読みかけの本
密教』/松長有慶/岩波新書/1991.7

 

■この一冊

『宇宙は何でできているのか』/村山斉/幻冬舎新書/2010.9 ★★★★

 同じ著者による『宇宙は本当にひとつなのか』/講談社ブルーバックス/2011.7 ★★★★ 

 

 前者は当時話題になった書。ヒッグス粒子が発見される前の著作だが、現代の最新物理学と宇宙論をわかりやすく解説。内容はタイトル通りで、素粒子論と宇宙論が一続きであることがわかる。

 

●酒肴全般

 純米酒/特別純米酒一ノ蔵/(株)一ノ蔵/宮城県大崎市 ★★★★

 

 一ノ蔵の酒はなべて旨いものが多く、あまりくせがなく飲みやすい。これは甘口。純米酒にはさまざまバリエーションがあり、今度は辛口でも。大吟醸や現在の本醸造もまだ味わっていない。

 

▼この一本

 本醸造/一ノ蔵 無鑑査/(株)一ノ蔵/宮城県大崎市 ★★★★★

 

 ただし、昭和時代に飲んだもの。大学時代、味もわからずただ安いだけの酒を飲んでいたが、ある時友人に勧められて飲んだ時の驚き。酒とはこんなに違うものか。糖類、酸味料無添加の良心的な製法。当時は酒の作り方など意に介していなかった。現在の酒好きにいたる日本酒開眼の一本。無鑑査故、高いレベルの酒ながら二級酒よりは少し高いもののリーズナブルな価格。当地に帰ってきてから手に入れることができず。仙台の後輩に送ってもらったこともあった。平成に変わった頃からだろうか、市内でも特定の酒屋で買えるようになったが、それと引き替えのように全く味が変わってしまった。往時の、何とも云えない甘く寂しそうな香りが消えてしまっていたのだ。現在では、無鑑査一の蔵の甘口、辛口、超辛口などバリエーションも増え、市内の多くの酒屋で手に入れることができるようになったのには今昔の感。長年口にしたことはないが、現在はどういう風な味になっているのか改めて賞味してみたい。

 

From 高*庵

 

■最近読んだ本
西郷札」(1951)「くるま宿」(1951)「啾々吟」(1953)(『松本清張小説セレクション第35巻』)/1996 ★★★★

 

 「伝光会」の前日、腰痛がひどくて動けず、松本清張の短編を3作読みました。

 「西郷札」(さいごうさつ)は清張のデビュー作ですが、何故かこれだけ読んでなかったので長年気にかかっていました。清張は社会派ミステリー作家のイメージが強いのですが、時代小説でデビューし、その後もたくさん書いています。

 国民的人気作家故、量産を余儀なくされ、後年は筆が荒れた感があるのですが、初期の短編はさすが質の高いものがあります。読んで面白いことは保証済。

 

●今読みかけの本
 前号で読みかけの『若葉のうた』『禅談』『唐詩選』など、すべて読みかけ中。特に唐詩は、気ままな拾い読みなので、読了はないかも…。

 

【編集人から】

 『若葉のうた』の金子光晴は徹底した反骨詩人として知られた方ですね。学生時代に、洒脱でちょっとエロいエッセーを愛読しました。

 

▼これから読む(購入する)予定の本
 読む予定はともかく、購入する予定はいつもないのですが、やはり買ってしまいます。今回は岩波新書杜甫川合康三著(2012.10)を買ってしまいました。

 今年は杜甫の生誕1300年なんだそうです。なんと昔の人でしょう! パラパラとめくっています…。

 

■アート全般

 一ヶ月かけて『広重と歩こう東海道五十三次』安藤敏信・岩崎均史著(小学館アートセレクション、2000)という本を見ています。

 これが中々面白い。どうも日本近世の美術史の中では、浮世絵の知識に乏しいもので「五十三次」も「三十六景」もキチンと見たことはなかったのが今回「五十三次」を一日一枚ずつ見、解説で江戸時代の風俗を読み、今日で27日目。今日は「掛川」です。

 実は5年前から、毎日一点美術品を見る(当然画集など複製なのですが)ということを続けています。絵画、彫刻、陶芸、書などジャンルを問わないのですが、絵画が中心となり、書、陶芸の順でしょうか。49歳の誕生日の次の日から始めてもう5年余り。

 娘に修行?といって笑われています。来月はマチスを見る予定です。

 

●酒肴全般

 昨年から冷え性が進んで冬場の夜は寒くてしょうがないので、芋焼酎のお湯割を飲むことにしました。熱燗という手もあるのですが、いかんせん日本酒はどうしても酔いが早くて…。

 その点お湯割はいいですね。これまでは焼酎というと麦オンリーだったのですがやはり芋もうまい。ただ、余りにも醸造元が多くて味の違いはよくわかりません。だいたい値段のランクが同じだったらそんなに違いはないかも…。

 

From 蝉氷坊

 

▼最近読んだ本

『時間のかかる読書』/宮沢章夫著/河出書房新社/2009.11 ?


 学生時代に日本文学研究会という名の怪しいサークルに籍を置いて、文学史上「新感覚派」と呼ばれる一群の作家に入れ込んだ時期がある。なかでも横光利一をよく読んだ。「蝿」の奇抜な描写や文体、「春は馬車に乗って」の少女漫画のようなタイトルと似つかわしくない重い内容とのギャップを愉しんだりしていた。

 本書は横光の代表作のひとつ「機械」を取り上げ、この作品をあらゆる角度から解体し、味わい尽くそうという試みである。著者によれば、本書は「速読術」に対する「遅読術」の成果である。なにしろこの中編小説を11年以上(!)かけて読むのである。

 とにかく疲労する本である。解釈は重箱の隅をほじくるがごとく、鑑賞はすでに玩弄の域に達するの観あり。評価不能、評点なしとした。

 

■今読みかけの本
『日本幻想文学集成』全三十三巻 森鴎外ほか/須永朝彦編/国書刊行会/1993.2

 

 たまたま青森の成田本店で国書刊行会フェアをやっているのに遭遇、前から欲しかったので思いきって全巻を購入(古書でですが)。今ではほとんど忘れられた中河与一という作家は残念ながら含まれていなかった。今読んでいるのは鴎外、泉鏡花中島敦

 

●これから読む(購入する)予定の本
Steve Jobs』下巻/W・アイザックソン/井口耕二訳/講談社/2011.11

 

 S・ジョブスが亡くなって早一年以上過ぎた。上巻はすぐに買って読んだけど、下巻もやはり読まなくちゃいけないんだろうなあ…。Apple 社製品のサクセスストーリーとしてはスリリングで面白すぎるくらい、なのにジョブスのエキセントリックな性格が引き起こす取引先とのトラブル、社員への高圧的な言動や容赦のない切り捨てには胸苦しさを通り越して不快感をもよおす。下巻はどうしようかと思いながら一年が過ぎた。

 

▼この一冊

『古句を観る』/柴田宵曲岩波文庫/1984.10 ★★★★★

 

 私の孤島への三冊は、本書、『三四郎の椅子』(前号に既述、池田三四郎著)、『ブッダのことば』(中村元編訳)。

 江戸時代の俳諧を愛着をこめて語る。詠む人の心情や句の情景を評する淡々とした文に味わいがある。著者の文章は私の手本である。

 

●アート全般

 前回『三四郎の椅子』という本に載る根来塗りの寺院用イスのことを書いた(ただし曲彔ではない)。今回は曲彔のことを少し(一種の家具だからアートといえなくもないだろう)。

 禅宗寺院では伝統的に曲彔とよばれるイスが用いられ、禅僧の頂相ではこれに座って画かれるのが一般的だ。

 曲彔とは背と腕がカーブした一本の木材でつながったイスのことだが、イスの名称自体中国でも日本でも統一されて来ず、さまざまな別名がつけられたため、名前からその形状を特定するのはむずかしい。脚を折りたたむ方式は「曲彔交倚」、固定式は「曲彔方倚」というのが正しい。(以上は小泉和子『家具と室内意匠の文化史』による)

 この定義からすれば、私たちが軽便曲彔と呼んでいるイスは、言い方が不正確ということになる。

 旅行で行った沖縄の首里城で、私たちが通常使うものと同じ形の曲彔を見た。玉座も曲彔で、こちらは背もたれと座面が円形の「円倚」とよばれるタイプであった。

 

▼この一作

映画『ツィゴイネルワイゼン』/鈴木清順監督/1980 ★★★★★

 

 内田百閒の短編「サラサーテの盤」をモチーフにした映画。鈴木清順の最高傑作と称される一方、しばしば否定的な意味で耽美的と評される(私はそう思わないが)。『陽炎座』『夢二』を加えて大正浪漫三部作とされるが、幻想味、映像美、語り口、すべてこの作品が傑出している。主演は原田芳雄藤田敏八大谷直子。特に大谷直子がいい(もともとファンだということもあるが)。

 スクリーンでは残念ながら未観。今年(2012年)1月に東京でリバイバル上映された。知ってたら無理してでも行きたかった、残念。

 

■酒肴全般

サントリー・ウイスキー「山崎25年」 ★★★

 

 「山崎25年」を飲む機会があった。しかも幸いなことに酔う前で味わう余裕がある時間帯。味は…複雑です、これが。一度も味わったことがない味であることは間違いない。木の強い香りと少し硬質の口当たり。いわゆる高級ウイスキーとは明らかに一線を画した孤絶のテイストとでも言おうか。ただ、好みの味ではなかった。

 

●この一本

さつま無双 白原酒/三和酒造/鹿児島市 ★★★★

 

 頂き物。焼酎はほとんど飲まないので味に記憶がないが、一口飲んで旨いなあと思ったことだけは憶えている。

 

【編集後記】
 文殊会通信第3号です。今回は発行が少し遅れました。
 懸案だった先住十七回忌(11月3日)と第二回「伝光会」(11月20日)も周囲の好意に助けられて無事終わり、師走は静かに過ごせそうです。
 データベース・アプリのFileMaker Proを使った寺務管理用ソフトのブログを準備中です。パソコンの超初心者が使えるソフトにしたいと、10年来改良に改良を重ねてきたもの。
 ヘッダの写真は今年の5月、映画『借りぐらしのアリエッティ』で有名になった尾上町(現平川市)の盛美園で撮った写真です。

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