読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

蝉氷坊のブログ

 文殊会通信(読書、映画、美術、酒をめぐる片言隻句)ぶらぶらあるき(県内篇・県外篇)梵夫の時間(おりおりの日誌)

文殊会通信 第2号2012年11月1日

f:id:senhyo-bo:20121030222034j:plain

 

From 海*堂

 

●最近読んだ本
『徳一と最澄』/高橋富雄/中公新書/1990.6 ★★★★

 

 副題は「もう一つの正統仏教」とあるように、従来、最澄或いは空海が論じられる時にのみ仏教史の舞台に登場しがちだった、奈良伝統仏教の法相宗の碩学、徳一菩薩復権の書。徳一は、会津、筑波に住し、地方から、新興仏教を宣揚して時代の波に乗り、天皇の寵愛を得て中央で活躍する最澄・空海に対し論争を挑んだ。法華経の解釈の相違に起因する論争は三・一権実論争と言われ、仏性思想の流れからすれば、インド起源の論争であり、中国を経由して日本に至るもので、人間の本質をどう見るかと言う議論である。両者五分五分の伯仲した論争だったが、すべての決着は三者遷化の後、1世紀以上を経て後のこととなるが、それぞれの教えの後世への影響、後に続く弟子達の活躍という点においては勝負にならなかった。

 

【編集人から】

 東北曹青の福島県大会で高橋先生を講師にお願いしたことがありました。内容も徳一大師についてでした。講演の口調から、仏教史学への義憤のようなものを感じたことを憶えています。中身は忘れましたが。

 

▼今読みかけの本
『人間臨終図鑑』ⅠⅡⅢ/山田風太郎/徳間文庫/2001.3

 

 眠りにつく前の数十分、布団の中で読んでいる。享年ごと若い順に、著名人の死に行く時の逸話を紹介。44歳、大石内蔵助の項「そもそも、浅野内匠頭吉良上野介に殺されたものではない。相手を傷害して、政府に罰せられたものである。従って、常識的には成立しない敵討ちという行為を、この分別ある年齢で、二年近い歳月をかけ、五十人近い同志を結集して成しとげたこの「昼行灯」は・・・」と言われてみれば、昼行灯と言われた大石の、まさに「昼行灯」さに気が付かなかった私も昼行灯。

 

■これから読む(購入する)予定の本
 とりあえず、『肉食妻帯考―日本仏教の発生―』/中村生雄/青土社/2011.12

 

●この一冊

 過去に読んだ本から

『神は妄想である』/リチャード・ドーキンス早川書房/2007.5 ★★★★

 

 著者はイギリスの生物学者。『利己的な遺伝子』で有名。副題に「宗教との決別」とあり、進化論を立場とする生物学から、神は妄想であると断じる。宗教によるさまざまな弊害を断罪するのは痛快。読んだのは3年前、なかなか衝撃的だった。

 

【編集人から】

利己的な遺伝子』、読みましたよ。神の存在を否定するのに膨大なエネルギーを費やさなければならない欧米社会に、ある種の非情さを感じます(イスラム世界のことは非難するくせに)。

 

▼アート全般
映画『マイ・バック・ページ』/山下敦弘監督/2011/WOWOW  ★★★

 

 川本三郎原作、妻夫木聡、松山ケンジ出演。60年代末、学生運動に巻き込まれた新聞記者(原作者)の実話を下に映画化。ラストの妻夫木の演技が秀逸。当時の雰囲気を良く作り上げていて、見ていて懐かしさを催させる情景が、当時の自分が暮らしていた時代を彷彿とさせる。

 

■酒肴全般
生原酒、醸造酒「七福神ふなしぼり」/菊の司酒造/盛岡 ★★★

 

 原酒なのでアルコール分が19~20度と高い。このタイプの原酒はどれも似たような味がするように思われる(偶私の飲んだものがそうだったかもしれませんが)ので皆さんのご想像通りでしょう。

 

●この一盃
「月の桂」/本醸造 大極上中汲にごり酒 ★★★★★

 

 まるでシャンパンのような発泡酒。洗練されたどぶろくといったところ。時に見かける後から炭酸を添加したようなものではなく、麹の香りが残り、沸々と発酵している。栓を開ける時には細心の注意が必要。へたすると中身が三分の一ぐらい流れ出してあわてふためくこと請け合い。アルコール分:16~16.9%ですが三合飲むと記憶をなくします。昭和五十八年、かみさんの勤務先の教授宅で行われた忘年会に参加した時、初めて口にして驚愕。地元に戻ってからは酒屋で稀に見かるだけだったのに、今はネットで買えるいい時代。昨年末、思いついて探してみると、いつの間にか四合ビンから300mlビンもラインナップされてあって1人から少人数でも楽しめます。

 

From 高*庵

 

■最近読んだ本
『倚りかからず』/茨木のり子著/筑摩書房/1999.10 ★★★★


 13年前、詩集としては異例の大ベストセラーになった本。口コミで火がつき、あれよあれよという間に売れました。

 当時購入して読みかけだったものを読了しました。

 現代詩の難解さが一般の読者を遠ざけているのも事実なら、平易な言葉で書かれた深い詩は人の心をつかむというのも、また事実。

 

【編集人から】

茨木のり子の詩は、なぜあれほど人のこころを打つのでしょうね。本物の巫女の託宣とは、茨木のり子の詩のようなことばではないかと思います。

 

●今読みかけの本
1.『唐詩選』(中)/岩波文庫/2000.10(平成12)

2.『唐詩三百首』2.3./平凡社東洋文庫/1975(昭和50)


 『唐詩選』は明代の、『唐詩三百首』は清代の編集であるが、そこに載せられている詩は千数百年前のもの。外国で千年以上前に書かれた詩が今もこの日本で沢山刊行され、読まれ、感動を与えているという事実に今更ながら驚く。

 

3.『若葉のうた』/金子光晴著/勁草書房/1967(昭和42)初版 2011版

 

 詩集。数日前、今年初めて県外である仙台市ジュンク堂で購入。45年前に刊行された詩集が増補や真相を繰り返して、現在も出版されていることに驚き。誰が買うんだろう?と思いつつ、即購入。評価は次回。

 

4.『禅談』/沢木興道著/大法輪閣/1962(昭和37)

 

 沢木興道を宗門で知らぬ人はいないだろうが、既に没後48年。沢木老師とは一体如何なる人物だったのだろう、改めて知りたくて読み始めました。まだ最初の方しか読んでませんので、感想は次回。

 

▼これから読む(購入する)予定の本
 とりあえず前項で読みかけの本を。購入する予定はいつもないものの、やっぱり大きな本屋に入ると買ってしまうあの本、この本……。

 

■この一冊

 急には浮かんできません。次回にでも……。

 

●アート全般
 10月7日に十和田市現代美術館の「奈良美智展」に、高校2年の娘と行ってきました。あの目つきの悪い?女の子の絵や……私はどうもよくわからん。娘の方がピタッとくるものがあったようです。 ★★

 10月19日、宮城県美術館の「東山魁夷展」に。今から35年前、私が18歳だった時に渋谷の東急で「東山展」がありました。当時彼は最高の人気作家でした。デパートの最上階から一階まで行列。それでも足りずに建物の回りをとぐろを巻いて入場待ちの人の列、列……。

 国民画家と呼ばれた、ある意味わかりやすい風景画の代表作を観ながら色々考えるものがありました。 ★★★

 

▼酒肴全般
 先週東北大学で買ってきた「萩丸」(はぎまる)を、昨夜友人達3人で我が家で飲みました。「萩丸」は東北大のオリジナル・ブランド?ということですが、御存知のように「一ノ蔵」で作っている特別純米酒です。淡麗辛口系で、私はおいしいと思いました。

 東北大ビールや東北大ワインもありますが、私はまだ飲んだことがありません。お2人は如何ですか?

 「萩丸」特別純米酒 ★★★★ 頑張れ東北ということで……。

 

■この一盃

 昔、時々取り寄せて飲んでいた岐阜県の天領酒造の「飛騨の和倉」という純米吟醸(だったと思う)がとてもおいしかったような……。

 辛麗なのにほのかな香りがあり、且つくどくない。そんな感じの酒だったと思います。 ★★★★★ ということにしておきましょう。

 

From 蝉氷坊

 

●最近読んだ本
『映画の中のアメリカ』/藤原帰一著/朝日選書/2006.3 ★★★

 

 『間違いだらけのクルマ選び』という本があった。私が読んだのは1980年頃。著者の主張するいいクルマ作りとは、ひと言で言えば見えないところにお金と技術を注ぎ込む良心である。その結果はアメリカ=最悪、日本=ダメ、ヨーロッパ=まずまずで、もっとも評価していたのがVW社のゴルフだったと記憶する。要するに、最優先されるべきは安全性と耐久性(剛性)であってスタイルや走行性ではない、という考え方である。いわゆる通好み、玄人志向である。著者が推奨する車が、著書ほどには売れていなかった気がする。

 私は映画好きだが映画通ではない。本書には224本の映画が登場するが、そのうち観た(はずのものも含めて)のは68本だったが、多くはタイトルすら知らない。やはり通好み、玄人志向の選択である。評点が辛く、ほとんど誉めないという点で両書は共通している。

 著者の藤原氏は気鋭の政治学者。映画に関する著書も多い。放送大学の講師をしているので、テレビで講義を聴くこともできます。『戦争を記憶する―広島・ホロコーストと現在―』(講談社現代新書、2001.2)はおもしろい(読みかけです)。

 

▼今読みかけの本
1.『銃・病原菌・鉄』上・下/ジャレド・ダイアモンド著/草思社/2000.2

 

 海*堂さんが取り上げていた本。広い視野の壮大な文章の中に細部への記述が適度に織り込まれていて、どんどん読めそう。確かにおもしろいです。


2.『歴史を読み解く』/服部秀雄/青史出版/2003.11

 

 高*庵さんが名前をあげていた『河原ノ者・非人・秀吉』は購入してまだ読んでいません。同じ著者による、歴史学論考集。九つの実例を挙げた中に、鴎外の小説『阿部一族』に関する章があり古書にて購入。この小説には『高瀬舟』にも通じる居心地の悪さがある。次号で取り上げたい。

 

3.『宗教で読む戦国時代』/神田千里/講談社選書メチエ/2010.2

 

 本はネットで買うのが日常になってしまい、久々に書店で買った一冊。以前朝日新聞で、菅原伸郎という人が戦国時代の宗教事情に関するコラムを連載していた(切り抜きが手元に見つからない)。タイトルに惹かれて手にした本書に、同様の内容があったので買ってみた。

 

■これから読む(購入する)予定の本
『出家の覚悟』アルムボムッレ・スマナサーラ 南直哉共著/サンガ選書/2011.2

 

 経済誌『PRESIDENT』10月29日号にも南さんと島田裕巳氏との対談が載ってますね。

 

●この一冊

『三四郎の椅子』/池田三四郎/文化出版局/1982(絶版) ★★★★★

 

 大切にしている一冊。時々取り出して眺めている。蒐集欲はないが、お金とスペースがあれば座り心地のいいイスを集めてみたい。本書には「お坊さんのイス」として唯一仏教寺院のイスが載っている(教会のイスは数点あり)。水桶の取っ手部分をそのまま半円状に背もたれにしたような形をした小さな腰掛けである。丸柱の残り材で造られたらしく、根来塗りだそうだ。

 

▼アート全般
映画『大統領の陰謀』/アラン・J・パクラ監督/1976/BS朝日 ★★★

 

 民放BSで見た初めての映画。CMが多いのはやはりストレス。

 ワシントン・ポスト紙が社内を挙げて記者2人(D・ホフマン、R・レッドフォード)を応援したり、ディープ・スロート(内部告発者)が最初は渋っていた情報を徐々に差し出したり、と物語は進展していく。が、ウォーターゲート事件というアメリカ史上に残るセンセーショナルな事件を描いているにしては静かな映画だ。2人のジャーナリスト魂と、上司やディープ・スロートの「権力の不正を暴く」ことへの正義感には「ずれ」があるような気がしないでもない。タイプライターの文字の大写しで事件のその後が語られる最後のシーンは、あっけなくそっけない尻すぼみな印象。期待して肩すかしを食らった、という感じ。主人公の2人はかっこいい。

絵画「大津絵」


 大津絵というジャンルがある。江戸時代を通じて近江の大津で売られた民俗絵画で、土産物やお守りとして人気を博したという。阿弥陀仏や観音菩薩など、仏教が画題になることも多い。現在は専門の美術館もあり、企画展もたびたび開かれているが、その性格上一般に広く流布していてコレクターも多く、市場も玉石混淆状態である。

 たまたま芹沢銈介美術工芸館(東北福祉大学に併設)で実物を見る機会があった。いかにも庶民向けのお土産といった感じで、紙も絵柄もチープと言えなくもない。画集や図録で眺めるだけだが、素朴な味わいがあり見ていて飽きない。

 

●この一作

映画『ブレード・ランナー』/リドリー・スコット監督/1982 ★★★★★

 

 すべての画面が記憶に残るほど繰り返し観たが、実は劇場で観たことがない。生きているうちに一度は観たいなあ。

 

▼酒肴全般

大吟醸「宝山」/宝山酒造/新潟県新潟市 ★★★


 大本山永平寺参拝の帰り、林泉寺と五合庵を拝観した。その途次、五合庵からほど近い酒蔵で試飲。実は一番安い本醸造『宝山』がおいしかった(燗で飲んだら旨かろうという味です ★★★★)が、見栄を張ってこちらに。

 

■この一盃

特別純米 美山錦55%「綿屋」/金の井酒造/宮城県栗原市

 

 6年ほど前に檀家さんからいただいて飲んだ。全く知らない銘柄で、先入観なしで飲んだら旨さに絶句。その時のメモには ★★★★★ がついている。味を忘れたのでとりあえず ★★★★ としておきたい。2度目はまだなので、楽しみにしたい。

 

【編集後記】
 文殊会通信第2号です。予定どおりで、まずは順調な出だしです。
 古川柳が好きである。研究書をいくつか読んだ中に、禅宗の僧侶は庶民からはおおむねまじめで好意的に見られていた、という意味の記述があった。川柳において僧や寺は揶揄嘲弄の対象になることがほとんどだが、そうでない句も少ないがなくはない。「生れた家をきたながる僧」「死だ和尚を誉るとうふ屋」などは前者の例だが、「虚無僧の顔へこまかに日があたり」には敬意と親しみが感じられる。「鏡を見ぬが僧のたしなみ」という句には、凛然とした存在への共感がこめられていよう。
 ヘッダの写真は、五合庵の合成ショットです。

広告を非表示にする
蝉氷坊通信メンバー  蝉氷坊 1954年生   海*堂 1954年生   高*庵 1958年生   法*斎