蝉氷坊のブログ

 文殊会通信(読書、映画、美術、酒をめぐる片言隻句)ぶらぶらあるき(県内篇・県外篇)梵夫の時間(おりおりの日誌)

文殊会通信第44号 2017年3月1日号

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●最近読んだ本

 

『小津ごのみ』/中野翠ちくま文庫/2015.5 ★★★

 中野翠というおもしろいエッセーを書く人がいる、ということは以前から承知していたが読んだことはなかった。ある漠然としたイメージがあって敬遠してきた。しかし、映画監督小津安二郎関連の情報に少なからず登場する本書は、どうしても読まねばならない。読んでみてほかの小津本との明らかな違いが分かり、著者に対する自分のイメージも的外れだったことが分かった。

 著者によれば、遅れてきた小津ファンである私たちは、小津映画に日本映画の正統を見出すのではなく、「映画の正統」をこそ見出さなければならない。映画は感性や視覚表現の芸術作品であるよりも、職人や技術者が寄り集まってつくりあげる製品である。「制作」よりも「製作」のほうがふさわしい(なお、映画作りにおいて、より正確には制作は製作の一部である、というのが定説であるらしい)。

 別な言い方をすれば、映画製作においては技術が何より優先するのである。感性はあくまで付随するものであり、感性のあるなしが作品の出来に寄与することはない。

 そして、たいていは製品である映画のほうが面白く、しばしば製品でありながら同時に芸術たりうる、ということが起きる。映画とはそういうものである。

 

『完本 小津安二郎の芸術』/佐藤忠男朝日文庫/2000.10 ★★★★

 

 日本を代表する映画評論家による小津論、小津映画論。大著にして好著。

 

『溥儀の忠臣・工藤忠』/山田勝芳/朝日選書/2010.6 ★★★

 学生のころ山田清三郎という人の『皇帝溥儀』という本を読んで以来、溥儀は私にとって気になる人物のひとりになった。

 工藤忠は青森県板柳町の出身で元の名は鉄三郎、中国に渡って大陸浪人となりかつ熱烈な復辟派となる。その後溥儀の信頼を得て侍従職(正式には侍従武官、侍衛長)になった。忠の名は、関東軍に疎まれた工藤を守り側近とするために溥儀が下賜したものである。溥儀の自伝『わが半生』からもその信任の厚さをうかがうことができる。県人としてもう少し知られてよい人物と思う。

 

金子みすゞ ふたたび』/今野勉小学館文庫/2011.8

 

『中世の貧民』/塩見鮮一郎/文春新書/2012.12

 

伊東マンショ その生涯』/マンショを語る会編著/鉱脈社/2012.6

 

 伊東マンショは戦国時代末期に有馬晴信キリシタン大名が派遣した四人の天正少年使節の正使主席。

 

『漢文脈と近代日本』/齋藤希史角川ソフィア文庫/2014.5 ★★★★

 

 漢文脈という中国伝来の漢文表記の底流にある思考と感情のメカニズムから、明治以降に機能化された漢文訓読体が創り上げてゆくメディアにおける文章形態や文学における文体、それらが醸成していく時代の空気まで、明治という近代日本の国のあり方や日本人の行動様式を分析する。

 

▼最近観た映画

ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期」/シャロン・マグアイア監督/イギリス/2016/八戸フォーラム ★★★

 

この世界の片隅に」/片渕須直監督/東京テアトル/2016/TOHOシネマ ★★★

 

「沈黙-サイレンス-」/マーティン・スコセッシ監督/アメリカ/2016/八戸フォーラム ★★★

 

■最近観たテレビ

美の壺「和包丁」/NHK BSプレミアム

 

NHKアーカイブス「戒厳指令”交信を傍受せよ”~二・二六事件秘録~」/NHK総合

 

BS世界のドキュメンタリーヒトラー 最後の日々」

 

【編集後記】

 通算44号です。

 2016年8月から実に8ヶ月ぶりの更新です。この半年余り、ここに挙げたほかにも本を読み、映画も観ました。忙中閑あり、と言いたいところですが寸評を書くだけの余裕が持てません。特に映画に関しては長所よりも欠点の方に気をとられるからです。忙しすぎて気持ちが摩滅している自分を恥じるばかりです。

 さて、必要があって道元禅師の『正法眼蔵』の「有時」を久々に読みました。やはりよく解らない。文章のリズムの心地よさだけは伝わるのですが。『眼蔵』を読むとき、私は一つのセンテンスの終わりを予想しながら読むようです。「読むようです」と頼りなく書くのは、熟語やフレーズの反復・反転の多い『眼蔵』に対して、内容の理解より読むことの楽しさを優先するから、かな? だろうな。

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